青い海と豊かな温泉に恵まれた熱海ですが、その街並みは急な傾斜や長く続く階段が多く、高齢者の方々にとっては移動が容易ではないという側面を持っています。この複雑な地形で、移動に悩む人々の希望となっているのが、介護タクシー「伊豆おはな」を運営する河瀬豊代表です。2013年にこの地へ移住した河瀬代表は、熱海の救急車出動回数が極めて多いという地域の課題に注目しました。
そこで彼が考案したのは、通常のタクシーを利用するには不安があるものの、救急車を呼ぶほどの緊急性はないという、いわゆる「隙間」の状態にある高齢者を支えるサービスです。この事業計画は、熱海の創業支援プログラム「99℃(きゅうじゅうきゅうど)」によって磨き上げられました。ちなみにこのプログラムは、地域の課題をビジネスで解決する「プレーヤー」を育成するための熱い起業家支援の枠組みを指しています。
現在は年間で4000件もの依頼に対応しており、その信頼の厚さは数字にも表れています。運営の要となっているのは、看護師の資格を持つ妻の愛美さんの存在でしょう。医療の専門知識を背景に、利用者本人はもちろんのこと、送り出す家族や病院の主治医からも絶大な支持を得ているのです。SNS上でも「プロの看護師が同行してくれる安心感は代えがたい」といった、心強いサポート体制を称賛する声が数多く寄せられています。
河瀬代表の原動力となっているのは、幼少期に大火傷を負い、長期間の入院生活を余儀なくされたという自身の原体験です。自由な外出が叶わない辛さを知っているからこそ、移動の壁に突き当たっている人々の力になりたいという想いは人一倍強いのでしょう。以前、末期がんを患う方の熱海旅行に1泊2日で同行した際は、緊急時の受け入れ病院の調査や宿泊先との細やかな調整を完璧に行い、安全な旅を実現させました。
こうした真摯な姿勢が、外出を諦めていた人々に「もう一度外の世界を楽しめる」という喜びを与えています。私は、こうした民間によるきめ細かなインフラ整備こそが、超高齢社会における観光地の寿命を延ばす鍵になると確信しています。公的なサービスだけでは手が届かない部分を情熱で補う河瀬代表のような存在こそ、これからの地方創生を担う真のリーダー像と言えるのではないでしょうか。
2019年12月26日現在、河瀬代表はさらなる高みを目指し、熱海での「介護ツーリズム」事業の立ち上げを計画しています。介護ツーリズムとは、高齢者や障がいを持つ方が、介助スタッフの同行により安心して旅行を楽しむ仕組みのことです。熱海がただの温泉地から、誰にでも優しい「バリアフリー観光の聖地」へと進化を遂げる日は、そう遠くないのかもしれません。これからの展開に、熱い視線が注がれています。
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