横浜市のみなとみらい21地区からわずか2キロほどの距離にある、JR根岸線の関内駅周辺に今、大きな変化の波が押し寄せています。2020年に予定されている市庁舎の移転により、かつては旧市街地の空洞化が危惧されていました。しかし現在、このエリアは新たなビジネスモデルで急成長を目指す新興企業、いわゆる「スタートアップ」の集積拠点として熱い視線を浴びているのです。
「世界を狙う企業にふさわしい」「新しいものを受け入れる風土がある」と、すでにこの地にオフィスを構える経営者たちは口を揃えます。SNS上でも「関内の古い倉庫を改装したオフィスがおしゃれすぎる」「歴史ある街並みと最先端のIT企業が混在していてエモい」といった驚きと期待の声が多数見受けられるようになりました。この独特の活気は、どのようにして生まれているのでしょうか。
起業家たちを惹きつける最大の魅力は、東京都内や隣接するみなとみらい地区と比較して割安な賃料設定にあります。それに加えて、ガス灯が灯るレトロな通りや歴史的建造物、そして海辺の美しい景観が、クリエイティブな発想を刺激するようです。複数の企業や個人が共同で利用する「シェアオフィス」も急増しており、横浜DeNAベイスターズや地元不動産会社による施設が次々と誕生しています。
行政と民間がタッグを組む強力な支援体制
こうした民間主導の盛り上がりを受けて、横浜市もソフト面での支援を加速させています。2019年10月には、起業家支援の新たな拠点となる「YOXO BOX(よくぞボックス)」を開設しました。林文子市長も、ベンチャー企業の集積による街の活性化に大きな期待を寄せています。成長指導や販路拡大をサポートする体制が整えられ、行政と民間が協力して事業を推進する「官民連携」の動きが本格化しているのです。
具体的な取り組みも成果を上げつつあります。富士ゼロックスの有志が始めた新技術の協業を探るイベント「ガジェットまつり」は、市との共催を経て、2019年にはなんと6000人を動員する規模にまで成長しました。また、タクシー配車アプリの実用化や、日本初となる自動運転大型バスの営業運転実証実験など、横浜という街全体を壮大な実験場として活用する画期的な事例が次々と生まれています。
真の「和製ブルックリン」へと飛躍するために
横浜市は2019年度から2021年度までの3年間で、市内での起業・立地件数を120件、支援企業が受ける投資額を100億円に引き上げるという野心的な目標を掲げています。近隣の大企業との連携が生まれやすい土壌は大きなアドバンテージでしょう。一方で、「企業が成長した際に移転できる中規模オフィスが不足している」という、定着環境への切実な声も現場からは聞こえてきます。
私個人としては、このムーブメントを一過性のブームで終わらせないことが何より重要だと考えます。成長した企業が市外へ流出しないよう、事業規模の拡大に合わせた柔軟な不動産供給や、方針が頻繁に変わることのない、腰を据えた優遇策が不可欠です。行政側が起業家の真のニーズを汲み取り、安定した事業環境を提供し続けることが、長期的な税収や雇用の増加といった街への還元につながるはずです。
マンハッタンの隣で独自の文化を育んだブルックリンのように、関内地区は今、みなとみらいとは異なる新たな魅力を放ち始めています。「横浜に進出してこそ革新が起こせる」。最先端の技術者たちにそう確信させるだけのエコシステムが完成したとき、横浜・関内は名実ともに、誰もが憧れる「和製ブルックリン」へと進化を遂げることでしょう。これからの展開から目が離せません。
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