2019年もいよいよ終盤を迎えましたが、日本の企業法務を取り巻く環境はかつてない激動のなかにあります。現役の弁護士を対象とした調査によると、今年最も注目を集めた案件として「米中貿易摩擦」が堂々の首位に輝きました。経済大国である両国の覇権争いは、単なる関税合戦の域を超え、日本企業のサプライチェーンや投資戦略に甚大な影響を及ぼし始めています。
特に弁護士たちが注視しているのは、米国の「対米外国投資委員会(CFIUS:セフィウス)」による規制強化です。これは安全保障の観点から外国企業による米国企業への投資を審査する公的な委員会のことで、審査対象が大幅に拡大されたため、日本企業の対米進出にはこれまで以上に慎重なリーガルチェックが求められるようになりました。
一方で中国側も、外資による投資の基本ルールを定めた「外商投資法」を2019年3月に成立させるなど、法整備を急ピッチで進めています。これら一連の動きに対し、SNSでは「もはや政治とビジネスを切り離すことは不可能」「法務部門の負担が過去最大級になっている」といった、現場の悲鳴にも近い反響が数多く寄せられているのが印象的です。
プライバシー保護とGAFAへの包囲網が加速
注目案件の第2位には、海外の個人データ保護規制がランクインしました。欧州のGDPR(一般データ保護規則)に続き、2020年1月1日から施行される「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」への対応に追われる企業が急増しています。デジタル化が進む現代において、顧客情報の扱いは企業の存亡を左右する極めてデリケートな課題といえるでしょう。
続いて第3位には、GAFAと呼ばれる巨大IT企業への規制強化と、国内を震撼させた関西電力の金品受領問題が並びました。GAFAへの風当たりが強まるなか、独占禁止法の改正や公正取引委員会による適用拡大といった動きも活発化しています。これらは、技術革新によって生まれた新しい市場に対し、法がいかに公正な競争を担保すべきかという、難しい舵取りを迫られている状況を反映しています。
さらに、就職情報サイト「リクナビ」による内定辞退率予測の販売問題も、社会的に大きな関心を集めました。この事件を契機に、データの分析から個人の性質を推測する「プロファイリング」への規制議論が加速しています。一連の不祥事は、コンプライアンス(法令遵守)だけでなく、企業倫理そのものが問われる時代の到来を告げているのではないでしょうか。
編集者としての私見ですが、2019年は「法務が攻めと守りの両輪で経営を支える時代」への転換点だと感じます。米中対立の長期化が予想されるなか、地政学的なリスクを法律の観点から読み解く能力は、今後ますます重要になるはずです。企業は単にルールを守るだけでなく、社会からの信頼をどう構築するかという「企業の品格」を問われているのです。
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