ロンドン金属取引所(LME)において、非鉄金属の代表格である銅の市場に大きな地殻変動が起きています。2019年12月20日現在、投資のプロ集団である「ファンド」の持ち高が、およそ9カ月ぶりに「買い越し」へと転じました。買い越しとは、将来の値上がりを見込んで買う量が、値下がりを期待して売る量を上回る状態を指しており、これは市場の主役たちが強気姿勢に転換した明確なサインといえるでしょう。
LMEが毎週公表している建玉明細によれば、2019年12月13日時点でのファンドの持ち高は約3600枚の買い越しを記録しました。1枚あたり25トンの重みがある銅取引において、この数字は決して小さくありません。振り返れば、米中貿易摩擦の激化や中国の景気減速を背景に、2019年の春以降は弱気な売り姿勢が継続していました。2019年8月末には約1万8000枚もの売り越しを記録していただけに、今回の転換は劇的です。
供給不安と政治決着が相場を押し上げる
この劇的な変化の引き金となったのは、世界最大の銅鉱石生産国であるチリでの混乱です。2019年10月中旬から広がった反政府抗議活動により、銅の供給体制に懸念が生じました。さらに追い風となったのが、長期化していた米中の通商交渉です。いわゆる「第1段階」の合意が伝わったことで、投資家たちの不安は一気に解消へと向かいました。供給の減少リスクと需要の回復期待が同時に押し寄せ、相場を力強く押し上げたのです。
専門家である住友商事グローバルリサーチの本間隆行経済部長も、好材料が重なったことでファンドが「リスク選好」、つまり積極的にリスクを取って利益を狙う姿勢になったと分析しています。SNS上でも「ドクター・カッパー(銅)が動き出した」「景気回復の先行指標になるか」と、銅相場の反発に期待を寄せる声が目立っています。産業の米とも呼ばれる銅の価格上昇は、世界経済の体温が再び上がり始めた証左なのかもしれません。
銅の3カ月先物価格は2019年12月に入ってから急ピッチで値を上げており、現在は約7カ月ぶりの高値圏で推移しています。筆者の見解としては、これまで過度に悲観的だった市場心理が、実需と期待の両面から修正された健全な動きだと考えています。もちろん政治情勢に左右される面はありますが、ファンドがこれほど明確に買いへ舵を切った事実は、今後の非鉄金属市場を占う上で最重要のトピックとなるに違いありません。
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