世界経済を揺るがし続けているアメリカと中国の貿易摩擦。2019年12月04日現在、両国の歩み寄りを期待する声が国際商品市場に大きな変化をもたらしています。閣僚級による前向きな発言が相次いだことで、投資家の間では「景気が上向くのではないか」という楽観論が浮上しました。このムードを敏感に察知したのが、経済の体温計とも呼ばれる原油や非鉄金属の市場です。
SNS上では「米中合意が近いなら、今のうちに資源株やエネルギー関連を仕込むべきか」といった期待感あふれる投稿が目立つようになりました。実際に原油の国際指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、11月初旬と比較して約4%も上昇し、1バレル56ドル前後で推移しています。これは、リスクを取って利益を狙う「買い安心感」が市場全体に広がっている証拠といえるでしょう。
さらに、原油価格を支えているのは政治的な思惑だけではありません。2019年12月05日に開催予定のOPEC(石油輸出国機構)総会では、現在実施されている減産措置の延長が議論される見通しです。減産とは、市場に出回る石油の量を絞ることで価格を維持する戦略のことですが、この期限が2020年06月まで延びるとの観測が出たことで、供給過剰への不安が和らぎ、相場の下支えとなっています。
一方で、安全資産の代表格である「金」には逆風が吹いています。通常、情勢が不安定な時に買われる金ですが、米中関係の改善期待が高まったことで投資家がリスク資産へ資金を移し、2019年11月12日には約3カ月ぶりの安値を記録しました。このように、景気への期待感によって「売られるもの」と「買われるもの」が鮮明に分かれているのが現在の興味深い状況です。
非鉄金属の反発と穀物市場に漂う「疑心暗鬼」の正体
景気回復の恩恵は、銅やアルミニウムといった非鉄金属にも波及しています。ロンドン金属取引所(LME)の銅相場は10月から5%ほど上昇しました。これには供給側の事情も大きく絡んでいます。世界最大の銅生産国であるチリでのデモ長期化や、中国の製錬所における採算悪化といった「供給不安」が、価格を押し上げる要因となりました。自動車生産の回復を見越した天然ゴム市場も、堅調な推移を見せています。
しかし、これらのお祭り騒ぎを冷ややかな目で見守っているのが穀物市場です。大豆の価格は、10月に「米中の一部合意」が発表された当時よりも6%安という水準に沈んでいます。ネット上でも「農産物は政治の道具にされすぎて、もう誰も信じていない」という冷ややかな意見が散見されます。市場関係者の間では、度重なる「合意間近」という言葉が、もはや「オオカミ少年」のように響いているのかもしれません。
専門家は、穀物こそが米中協議の「本丸」であると指摘しています。中国が米国産の大豆などを大量に買い付けるという具体的なアクションが伴わない限り、相場が本格的に動き出すことはないでしょう。期待だけで先行する資源市場に対し、実利を求める穀物市場。このコントラストは、米中対立という巨大なパズルがまだ完成には程遠いことを、私たちに静かに物語っているようです。
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