日本国内での誕生に向けて大きな期待が集まっていた、カジノを含む統合型リゾート「IR」の整備計画が、今まさに大きな岐路に立たされています。2019年12月24日に大阪府と大阪市が事業者の公募をスタートさせた直後、現職の衆院議員が収賄容疑で逮捕されるという衝撃的な事件が発生しました。この突然の不祥事に対し、巨額の融資を検討していたメガバンクの幹部たちからは、今後の事業進展に冷や水を浴びせられた格好だと落胆する声が漏れ聞こえています。
SNS上でもこのニュースは瞬く間に拡散され、「クリーンなイメージで進めるべき事業なのに最初からこれでは先が思いやられる」といった厳しい意見が相次ぎました。さらに、「外資系企業に日本の利権が食い荒らされるのではないか」という懸念や、「利権絡みの黒い噂が多すぎて、本当に地域経済の活性化につながるのか疑問だ」という不信感を示す投稿も目立っています。国民の関心や監視の目がこれまで以上に厳しくなっているのは間違いありません。
そもそもIRとは、カジノだけでなく国際会議場や大規模な展示施設、ホテル、ショッピングモールなどを一体化させた複合施設のことです。その総投資額は5000億円から1兆円規模という天文学的な数字にのぼるため、参入を目指す事業者だけで全ての資金を準備することは不可能です。そこで重要になるのが銀行からの巨額の借り入れであり、資金調達の中心的役割を担う主幹事銀行になれば、莫大な手数料収入が見込めるため金融機関も熱視線を送っています。
しかし、現在の状況は銀行にとって決して楽観できるものではなくなってきました。2019年11月20日、政府が自民党の会合で示した資料により、当初は2020年中と目されていた自治体の整備計画の認定時期が、2021年以降へと大幅にずれ込む見通しであることが判明したためです。政府は申請の締め切りを2021年7月とする方針を明らかにしており、これに伴って実際の開業時期も早くて2020年代半ばから後半へと先送りされる情勢となりました。
このスケジュール遅延の背景には、2020年7月に予定されている東京都知事選が終わるまで、誘致の表明を控えたい首都・東京への政治的な配慮があるのではないかと囁かれています。準備期間が延びたことで、これまで静観していた自治体が新たに参入しやすくなるという側面もありますが、融資を行う銀行側にとっては「事業の先行きが見通せない」という最大の足枷になりかねず、事態の長期化を懸念する声は日増しに強まっています。
現時点で政府が認可するIRの枠は最大3カ所とされており、大手銀行はそれぞれ有力な候補地を支援する形で緩やかな住み分けを行ってきました。例えば、三井住友銀行は海外の大手事業者が強い意欲を示す大阪での展開に注力し、みずほ銀行は横浜での参入を狙う京浜急行電鉄の手助けをする構図です。銀行が融資を行う際は、事業そのものの採算性や資産価値を担保にする「プロジェクトファイナンス」という手法が用いられるのが一般的です。
プロジェクトファイナンスでは、年間の来場者数やカジノの収益予測を徹底的に分析して融資条件を決めるため、圧倒的な集客力を誇る「東京」がもし後から参戦してくれば、他地域の収益計画が一変してしまうリスクを孕んでいます。さらに2020年1月6日には、別の国会議員にも現金受領の疑惑が浮上するなど、事件の波紋はさらに拡大しています。銀行が最も嫌う「不確実性」という霧が立ち込める中、IRへの巨額融資の行方に注目が集まります。
コメント