中国が推進する巨大な広域経済圏構想「一帯一路」が、世界中で大きな波紋を呼んでいます。2013年に習近平国家主席が提唱したこのプロジェクトは、かつてのシルクロードのようにアジアと欧州を陸路と海路で結ぶ壮大な計画です。すでに137カ国が協力文書に調印しており、その勢いはとどまることを知りません。SNS上でも「世界地図が塗り替えられるようなスケールの大きさだ」と、その影響力に驚く声が多数寄せられています。
陸のルートである「一帯」の象徴が、中国の各都市と欧州をノンストップで駆け抜ける貨物列車「中欧班列」です。2019年11月上旬には、トルコの首都アンカラの駅ホームで盛大な歓迎式典が開催されました。中国西北部の西安からチェコのプラハを目指すこの路線は、全長が1万1483キロメートルにも及びます。カザフスタンやハンガリーなどを経由し、わずか18日間で駆け抜けるというから驚きを隠せません。
これまでは欧州へ輸出する際、イスタンブールでフェリーに載せ替える必要がありました。しかし、鉄道による陸路輸送が実現したことで、物流の利便性は飛躍的に向上するでしょう。式典に出席した中国の胡和平共産党中央委員は、アジアと欧州の商業や経済関係の発展に大きく貢献する路線であると、その意義を力強く強調していました。2013年には年間わずか80本だった運行本数が、2017年には3673本へと急増しています。
貨物列車は中国から電子機器や自動車部品を運び、欧州からはワインやチーズ、肉類を満載して戻ってきます。一方で、海のルートである「一路」は世界の重要な港湾を拠点にする狙いがあるようです。中国はオーストラリアのダーウィン港やギリシャのピレウス港などの運営権を次々と取得していきました。2019年11月に現地を訪問した習主席は、お互いに利益を得られるウィンウィンの成功例だと胸を張っています。
しかし、この華やかな大構想の裏には、見過ごせない深刻な問題も浮上してきました。中国が沿線国に巨額の資金を貸し付けてインフラを建設する手法が、相手国の財政を圧迫しているのです。返済不能に陥った国が拠点の運営権を中国に奪われてしまう現象は、「債務のワナ」と呼ばれて世界中で警戒されています。SNSでも「発展途上国の弱みに付け込んでいるのではないか」といった批判的な意見が急増してきました。
実際にスリランカのハンバントタ港は、資金返済の目処が立たなくなったため、2017年に99年間という長期の租借権を中国に奪われてしまいました。この港には、すでに中国の潜水艦が寄港しているという情報もあります。民間企業の港湾運営権(インフラの管理・営業を行う権利)だったはずのものが、いつの間にか軍事拠点として利用されているのではないかという懸念が、欧米諸国や現地で急速に強まっているのです。
米国のシンクタンクである世界開発センターは、2018年3月の報告書で衝撃的な指摘を行いました。キルギスやモルディブ、ラオスをはじめとする8カ国が、借金を返済できずに同様の危機に陥るリスクがあると警鐘を鳴らしたのです。パキスタンでは中国主導の開発に対する反発が激化し、現地にある中国の総領事館が襲撃されるという痛ましい事件まで発生してしまいました。
こうした国際的な批判を受け、中国側も戦略の修正を迫られているようです。2019年4月に開催された一帯一路サミットの席上で、習主席は沿線国の首脳らを前に、商業上および財政上の持続可能性を確保しなければならないと言及しました。これは融資の基準などを見直す考えを示唆したものとみられます。強硬な姿勢から、ようやく周囲の懸念に配慮するポーズを見せ始めたと言えるでしょう。
一帯一路は、インフラが不足する途上国にとって魅力的な開発資金をもたらす一方で、国家の主権や安全保障を脅かす諸刃の剣であると言えます。中国には、自国の利益追求だけでなく、相手国の自立を促す透明性の高い支援が求められるはずです。債務のワナという不名誉なレッテルを払拭できるのか、今後の融資基準の運用体制を世界が厳しい目で見守っています。
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