インドネシア配車アプリが乱立!ゴジェック・グラブを追う40社の激戦と市場の未来

東南アジアの熱気あふれるインドネシアで、今まさにスマートフォンのアプリを活用したバイクタクシーの配車サービスが凄まじい勢いで急増しています。2019年12月末時点で、その数なんと40社近くに達していることが判明しました。業界の2大巨頭である「ゴジェック」や「グラブ」の圧倒的なビジネスの成功に触発され、あやかろうとする企業が後を絶たない状況なのです。しかし、この急速な過密状態は市場の許容量を超えつつあり、現場では看過できない深刻な摩擦も生み出しています。

象徴的な事件が2019年12月末に発生しました。中部ジャワ州の歴史ある古都スラカルタに位置する新興配車サービス「マキシム」の事務所前で、競合であるゴジェックとグラブの運転手たちが激しい抗議の声を上げたのです。彼らはマキシム側に対して「違法な値下げ行為を即座に中止せよ」と詰め寄りました。マキシムの責任者は地元メディアに対し、政府の運賃規制は厳守しており、不当に安く販売する不当廉売(ダンピング)には当たらないと主張しています。

しかし、一部の報道によると、マキシムが提示した運賃は既存大手の半額以下に設定される局面もあったとされています。SNS上でもこの騒動は瞬く間に拡散され、「安くなるのはありがたいけれど、安全性が心配」「ドライバー同士の縄張り争いが怖くて利用しにくい」といった、利便性を歓迎しつつも治安やサービスの質に不安を抱くユーザーのリアルな声が数多く飛び交いました。まさに市場の急成長がもたらした歪みが、浮き彫りになった形です。

そもそもインドネシアでは、かつて「オジェック」と呼ばれる伝統的なバイクタクシーが市民の足として定着していました。ですが、従来のオジェックは料金が事前の交渉制だったため、現地の人々にとっても使い勝手が悪かったのです。激しい交通渋滞をすり抜けられる利点がある一方で、通常の4輪タクシーよりも割高な料金を請求されるケースが日常茶飯事でした。そうした不便な移動手段に劇的な革命をもたらしたのが、2015年頃に台頭したゴジェックやグラブです。

両社はスマホの位置情報を活用した効率的なマッチングシステムを導入し、配車の無駄を徹底的に排除しました。その結果、運賃は劇的に値下がりし、誰もが気軽に使える国民的サービスへと進化したのです。この功績により、両社は企業評価額が10億ドル(約1100億円)を超える未上場の超有望企業「ユニコーン企業」へと上り詰めました。この輝かしい成功神話が引き金となり、一獲千金を狙うフォロワー企業が次々と市場へなだれ込む結果となったわけです。

スポンサーリンク

模倣だらけの乱立市場と地方都市に潜む持続性のリスク

運輸省の非公式な調査によると、スマホでバイクタクシーを呼べるサービスを展開する企業は現在38社に達します。厳格なイスラム法が適用されているスマトラ島北部のアチェ州で、女性の安全な移動をサポートする女性専用配車アプリ「コアラ」のような、独自のニーズを捉えた個性的なサービスも一部には存在しています。しかし、大半の新興企業は「先行大手のビジネスモデルの表面を都合よく真似ただけに過ぎない」と、日系のベンチャーキャピタル関係者は冷ややかに分析します。

実際に「ゲジェック」や「ボジェック」など、本家と見間違うような名前を意図的に冠した、消費者の誤解を狙ったとしか思えないアプリも増えており、健全な競争とは言えない状況です。現在インドネシアの配車市場はゴジェックとグラブが2分していますが、この2大巨頭でさえ、配車事業単体での黒字化は未だ達成できていません。多くの新規参入組は、大手が参入しきれていない地方の小さな街に活路を見出していますが、その事業が長期的に継続できるかは極めて不透明です。

現在、インドネシア国内のバイクタクシードライバーは総勢200万人を突破したと推計されています。運転手が増えたことで、利用者はアプリを起動すれば瞬時に迎えが来るという恩恵を享受できるようになりました。その一方で、ドライバー1人あたりの実質的な収入は減少傾向にあります。サービスの過剰な乱立によって泥沼の価格競争がこのまま激化してしまえば、配車サービスという魅力的な産業そのものが共倒れになり、崩壊を招きかねないリスクを孕んでいます。

事態を重く見たインドネシア運輸省は、過当競争に歯止めをかけ、ドライバーの最低限の生活を保障するために、運転手の総数を制限する規制の検討に乗り出しました。しかし、スマホのアプリさえあれば誰でも手軽に運転手として稼げる手軽さが売りであるため、効果的な規制を具体化することは極めて困難であり、政府の担当者も有効な解決策が見出せずに頭を抱えています。

編集部としては、今回の配車サービスの乱立は、新興国の急成長期における「生みの苦しみ」であると考えます。誰もが参入できる自由な市場は魅力的ですが、模倣アプリによるダンピング競争は、汗を流して働くドライバーたちの生活を困窮させるだけです。今後は単なる価格の安さではなく、アチェ州の事例のような「ユーザーの特定の悩みを解決する独自の付加価値」を持った企業だけが淘汰されずに生き残る、質の高い競争へとシフトしていくべきでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました