世界的な投資ファンドの巨頭として知られる米国のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が、今まさにアジア市場への攻勢を劇的に強めています。2019年12月05日、同社は日本法人社長の平野博文氏と東南アジア代表のアシッシュ・シャストリー氏を、アジア太平洋地域のプライベート・エクイティ(PE)部門における共同責任者に抜擢したことを明らかにしました。
PEとは、将来性のある未公開企業の株式を取得し、経営に深く関与することで企業価値を高めてから売却する投資手法を指します。SNS上では「ついにKKRがアジアで本気を出してきた」「平野氏の就任で日本の案件も加速しそう」といった期待の声が広がっており、市場の関心は最高潮に達しています。潤沢な資金力を武器に、アジアの勢力図が大きく塗り替えられようとしています。
「ブライトスポット」を射抜くKKRの選美眼
KKRが注目するのは、世界経済が不安定な中でも高い成長性を維持する「ブライトスポット(明るい場所)」としてのアジアです。2019年08月には、キャンベル・スープからアジア太平洋地域の菓子事業を22億ドルで買収するなど、伝統的な企業の事業再編を支援する一方で、新興IT企業への出資にも余念がありません。彼らの投資の幅広さは、まさに変幻自在と言えるでしょう。
その象徴的な成功例が、インドネシアの配車サービス大手「ゴジェック」です。2015年にアプリを開始し、瞬く間に生活に欠かせないインフラへと急成長を遂げました。実は、この企業が「デカコーン」と呼ばれる評価額100億ドル超の巨大企業へと飛躍するきっかけを作ったのが、2016年08月に行われたKKRらによる5億5千万ドルの投資だった事実は見逃せません。
老舗ファンドであるKKRが動いたことで、世界の投資家の目線が一気に東南アジアへ注がれ、2018年以降のグーグルなどの本格参入を招く「呼び水」となったのです。単なる資金提供に留まらず、企業の社会的信用を底上げする「お墨付き」を与えた功績は非常に大きいと私は考えます。信頼という目に見えない価値を付加できるのが、超一流ファンドの真髄です。
2020年に向けた次なる一手と「賢い投資家」への挑戦
KKRの快進撃は止まりません。2018年にはフィリピンの決済会社ボイジャー・イノベーションズや、シンガポールのプロパティーグルにも出資を敢行しました。特にプロパティーグルは、2020年にかけて東南アジアで積極的な合併・買収(M&A)に乗り出すとの噂があり、不動産データ分析やデジタル住宅ローン分野での事業拡大が期待されています。
こうした成長期にある企業へ資金を投じる「グロースキャピタル」は、アジアの熱気を取り込むKKRの哲学そのものです。2017年に組成された約93億ドルのファンドに続き、市場関係者の間では2020年にも「アジア・ファンド4号」の準備が始まると囁かれています。その総額は過去最大規模になる可能性を秘めており、アジア全域でのデジタルトランスフォーメーションを加速させるでしょう。
しかし、昨今の未公開株投資を取り巻く環境は、かつてのような楽観論だけではありません。創業者のヘンリー・クラビス氏が語ったように、誰でも会社は買えますが、真に価値を向上させられるかは別問題です。デジタル化を支援する専門チームを抱えるKKRが、厳しい局面でいかに「賢い投資家」であることを証明し続けるのか、その手腕から目が離せません。
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