インバウンド新時代へ!野口観光が描く「欧米豪シフト」と2030年売上高300億円への挑戦

北海道を代表する宿泊大手、野口観光が2030年に向けてグループ売上高300億円という極めて意欲的な目標を掲げました。2018年度の実績である180億円から大幅な上振れを狙う背景には、拡大を続ける訪日外国人、いわゆる「インバウンド」の強い追い風があります。しかし、現在の東アジア圏に偏った集客のままでは、政治情勢や突発的なトラブルによるリスクを払拭できません。同社を率いる野口秀夫社長は、特定の地域に依存しない「広角打法」の確立こそが、これからの持続的な成長において避けて通れない道であると断言しています。

野口観光は登別や洞爺湖といった北海道の主要な温泉地を中心に、神奈川県の箱根なども含めて20カ所を超える魅力的なホテルや旅館を経営しています。現在の宿泊客に占めるインバウンドの割合は3割を超えており、まさに会社の業績を左右する重要な存在です。ネット上では「北海道の温泉街に行くと本当に外国人が増えた」「多様な文化が混ざり合って活気がある」といった声が上がっています。その一方で、北海道を訪れる外国人の約7割が中国、台湾、韓国、香港の4カ国・地域に集中しているのが現状です。

実際に2019年度は、台湾の航空会社によるストライキや日韓関係の緊迫化が響き、同社は減収減益を余儀なくされる見通しとなっています。こうした状況を打破するために野口社長が勝負をかけるのが、これまで手薄だった欧米やオーストラリアからの観光客誘致です。2019年12月には、新千歳空港に欧州から17年ぶり、オーストラリアからも12年ぶりとなる直行便が就航しました。世界から北海道へダイレクトに人々を運ぶインフラが整ったことは、同社にとってこれ以上ない絶好の好機と言えるでしょう。

さらに、2020年4月にはアイヌ文化の発信拠点である「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が sensible に開業を控えています。加えて、今夏には札幌でのオリンピックのマラソン・競歩開催も決定しており、世界中へ北海道の魅力をアピールする舞台は完璧に整いました。ここで言うインバウンドとは、単なる「外国人観光客」という一括りの言葉ではありません。国や地域ごとに異なる文化やニーズを深く研究し、それぞれに最適化されたサービスや旅行商品をきめ細やかに企画していく必要があります。

「それぞれの国に合わせたおもてなしを考える」という野口社長の持論に基づき、同社はInstagramをはじめとするSNSでの情報発信やプロモーションを急速に強化しています。SNS上でも「現地のリアルな温泉文化が写真で分かって嬉しい」「英語での案内が親切」と好評を博しているようです。また、観光業界全体で深刻化している人手不足に対しても、同社は一歩先んじた対策を講じてきました。2018年には、自社で独自の職業訓練校である「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を苫小牧市に設立したのです。

この学院では、集まった生徒を最初から正社員として採用し、給与を支給しながら接客や調理のプロフェッショナルとしての技術を学ばせています。卒業後に他社へ就職する道も開かれているものの、そのまま同社で働き続ける仕組みがあるため、優秀な人材の確実な確保につながっています。さらに野口社長は、これからは自社で建物を所有せずに「ホテルの運営」そのものに特化していく手法も視野に入れるべきだと語りました。これは、資産を自社で抱え込まない「アセットライト」と呼ばれる現代的な経営手法です。

従来の自社所有スタイルでは、施設の拡大に莫大な資金と長い時間がかかってしまい、せっかく育てた人材やノウハウを実践で活かす場を失いかねません。こうした柔軟でスピード感のある発想力に、私は経営陣の本気度を強く感じます。ただ、急増する外国人客と国内の宿泊客との間で、マナーや文化の違いによる摩擦が生じているのも事実です。これに対し、野口観光では食事の時間を分ける工夫や、多言語での入浴マナーを解説するアニメーション動画の制作といった具体的な解決策に乗り出しています。

文化の壁を排除し、誰もが快適に過ごせる環境を整える姿勢は、これからの国際的な観光地において必須の取り組みでしょう。野口社長は「オリンピック閉幕後に、後継者不足で廃業するホテルが全国で増えるのではないか」と強い危機感を示しています。大イベントの熱狂が去った後の10年を見据え、同社はすでに明確な成長への設計図を描き上げました。北海道観光の未来を占う勝負の年となる2020年を、輝かしい未来への出発点にできるか、リーダーの実行力に大きな期待が集まっています。

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