2019年の日本経済は、アメリカと中国による激しい貿易摩擦の荒波に大きく揺さぶられました。セイコーエプソンの碓井稔社長は、現在の世界情勢を「米中の覇権争いによる新冷戦状態」と表現しています。これまではアメリカ中心の経済視点だけで対応できましたが、これからは中国や新興国を含めた複数の視点を持つことが不可欠です。従来の国際的な協調関係が崩れることで、世界的な経済減速を懸念する声も上がっています。
しかし、このような混沌とした状況下でも、世界共通で突き進む2つの大きな潮流があります。それこそが、SDGsに代表される環境問題への対応強化とデジタル化の推進です。ネット上でも「激動の時代だからこそ、この2軸に注力する企業が生き残る」「新興国が一気にデジタル化で追い抜いていく未来が見える」といった共感の声が多数寄せられています。新興国は古いしがらみがない分、先進国以上のスピードで変化を遂げるかもしれません。
2020年01月10日現在、碓井社長は「今年も米中対立は互角のまま長期化する」と予想しています。それぞれの経済圏が複雑に入り組んでいるため、分断が進めば生産性の低下は避けられないでしょう。それでも両国には底力があるため、限定的ながらも成長は維持される見込みです。世界全体の経済成長率は2%台後半、日本国内の成長率は1%に届くかどうかという、緊迫した見通しが示されています。
こうした厳しい環境の中、セイコーエプソンの2020年03月期決算は大幅な減益予想となっています。しかし同社は、世界のどこが成長しても柔軟に対応できる強固な組織へと変革を遂げてきました。特に、これまで売上比率の小さかった中国やインド、南米などの新興国が大きな伸びを見せています。直近では新興国の為替が円高に振れたことで業績に打撃を受けましたが、将来の巨大市場において非常に有利なポジションを確保できていると言えます。
同社が今、最も力を注いでいるのが主力であるインクジェットプリンターを軸とした環境対応ビジネスです。ペーパーレス化に伴いプリンター市場全体が縮小する中、競合他社とのシェア争いは想像以上に激化しています。ですが、環境に配慮した同社の姿勢に対して「エプソンの環境への取り組みは素晴らしい」「これからのオフィスにはこういう技術が必要」と、SNSでも多くのユーザーや企業から好意的な意見が集まっています。
ここで注目したいのが、同社が掲げる「オープンイノベーション」という戦略です。これは自社の技術だけに固執せず、外部の企業や研究機関と技術・アイデアを出し合って革新的な価値を生み出す仕組みを指します。碓井社長は、環境に優しくコストも低いインクジェット技術を普及させなければ、社会から印刷文化そのものが消え去ってしまうという強い危機感を抱いています。だからこそ、他者と手を取り合うこの手法が不可欠なのです。
これからのビジネスにおいて、自前主義を脱却して志を同じくする仲間とつながるオープンイノベーションの視点は、企業の生存戦略として極めて正しい選択であると感じます。地球環境への貢献と企業の利益を両立させる姿勢こそ、現代のリーダーに求められるビジョンではないでしょうか。厳しい市場環境を乗り越え、社会に必要とされ続けるインクジェットの未来を守ろうとする熱い決意には、編集部としても深く共感させられます。
2021年度(2022年03月期)に売上高1兆2000億円を目指す中期経営計画は、いよいよ2年目という重要な節目を迎えます。世界的な環境意識の高まりとデジタル化の波を見据え、同社は以前から周到な準備を重ねてきました。碓井社長は「私たちが創り上げた価値を、社会へ自信を持って発信できる年になる」と力強く語ります。足元の業績は足踏みしていますが、掲げた高い目標を下げるつもりは一切ないようです。
「高収益の事業基盤を構築する」という大目標に向かい、同社はものづくりの現場から販売の最前線に至るまで、全社員が一丸となって覚悟を決めて突き進んでいます。どんなに世界情勢が不透明であっても、ブレない軸を持ってやり抜く1年がいよいよ始まります。明確なビジョンと環境への優しさを武器に、セイコーエプソンが新時代の大逆転劇をどのように見せてくれるのか、これからの動向から目が離せません。
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