北海道の豊かな自然のなかで歴史を紡いできたアイヌ民族が、自らの誇りと文化を守るために大きな一歩を踏み出します。十勝地方の浦幌町を拠点に活動する「浦幌アイヌ協会」が、伝統的なサケ捕獲の権利をめぐり、国と北海道を相手に近く裁判を起こす方針を固めました。関係者への取材により、2020年4月にも札幌地方裁判所へ提訴する準備が進められていることが判明しています。アイヌ民族がみずからの「先住権(せんじゅうけん)」を明確に認めるよう司法に訴えるのは、今回が歴史上初めての試みです。
現在、日本の法律や北海道の規則では、生態系保護などの観点から河川でのサケ捕獲が厳しく禁止されているのが現状です。しかし同協会は、この伝統儀式や生活の糧としての漁が、本来彼らに備わっている固有の権利であると強く主張しています。ここで重要となる先住権とは、ある土地に古くから暮らしていた民族が、後からやってきたマジョリティ(多数派)に同化されることなく、独自の文化や資源を維持・利用できる集団的な権利のことです。今回は、法律の網が自分たちには適用されないことの確認を求めています。
ネット上やSNSではこの報道に対し、「伝統文化の継承は守られるべきだ」「サケ漁の復活はアイヌの尊厳に関わる大切な問題」といった応援の声が数多く上がりました。一方で、資源管理のルールとのバランスを懸念する意見も見られ、多様な議論が巻き起こっています。実は、国が2019年5月24日に施行した新法において、アイヌ民族が「先住民族」であると初めて法律に明記されました。しかし、現在の政府は「現代のアイヌ民族には法的な特権を持つような集団は存在しない」という見解を示しています。
そのため、今回の裁判では「法的な権利を持つ集団とは一体何か」という点が最大の争点になる見込みでしょう。国際社会に目を向けると、2007年9月13日に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が存在します。この宣言にはサケなどの資源を捕獲する権利が集団に帰属することがはっきりと書き込まれており、日本政府も賛成票を投じました。国際的な約束事と国内の法制度との間に生じているギャップを、司法がどのように判断するのかが注目されます。
編集部の視点:伝統の復活は単なる漁ではない
この問題は、単に魚を捕る・捕らないという次元の話ではありません。筆者は、歴史的に奪われてきたアイヌ文化の尊厳を取り戻し、日本が本当の意味で多様性を認める社会へと脱皮するための試金石であると考えます。国連の宣言に賛成しながら国内では先住権を認めない姿勢には、やはり矛盾を感じざるを得ません。独自の文化を未来へつなぐために立ち上がった浦幌アイヌ協会の決断を支持するとともに、形式的な法解釈にとどまらない、時代の変化に即した前向きな司法判断を期待したいところです。
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