かつて団体旅行の聖地として一世を風靡した静岡県・熱海が、今まさに劇的な復活を遂げています。バブル崩壊後の衰退イメージを完全に払拭し、シニアの個人客を中心とした新たな賑わいを見せているのです。この活況に合わせ、街では新型ホテルの建設ラッシュが沸き起こっています。
SNSでも「最近の熱海はオシャレなお店が増えて若者だらけ」「昔のイメージと全然違う」といった驚きの声が溢れており、その変貌ぶりが大きな話題を集めているようです。こうした若年層の流入が、街全体にさらなる好循環を生み出しています。
注目を集める象徴的なスポットが、名作「金色夜叉」の像で知られる「お宮の松」の向かいに位置する大規模ビルです。かつて熱海のシンボルだった老舗ホテルの跡地であり、長年放置されていた未完成の商業施設が、香港系の業者によって最高級ホテルへと生まれ変わります。
2020年夏以降に「熱海パールスターホテル」として開業を予定しており、全87室に温泉が完備される予定です。こうした富裕層向けのラグジュアリーホテルの参入は、街のブランド力をさらに高めていくでしょう。ここで言うラグジュアリーホテルとは、単に豪華なだけでなく、最上級の設備と手厚い個別サービスを提供する高価格帯の宿泊施設を指します。
想定される客室料金は2人1室で7万から8万円となっており、お金と時間にゆとりがあるシニア層が主なターゲットです。同ホテルの担当者も、高級志向の宿泊需要は今後さらに拡大すると強気の見方を示しています。一時期は激減していた熱海の宿泊客数ですが、2011年度を底にV字回復を見せ、2015年度には300万人を突破しました。
新旧が融合する熱海!若者やインバウンドを魅了する次世代戦略
筆者は、この熱海の復活劇こそが現代の地方創生における理想的なモデルケースだと確信しています。単に昔の姿に戻るのではなく、時代のニーズに合わせて客層を多様化させている点が見事です。東京ドームグループは2019年3月に「熱海後楽園ホテル」をリニューアルし、宿泊と日帰りスパを融合させた新機軸のリゾートへと進化させました。[/p>
温泉に浸かりながら絶景を眺められるユニークな「露天立ち湯」などを導入した結果、若い女性を中心とした新しい顧客層の開拓に成功しています。さらに大手私鉄系のプリンスホテルも、2020年夏に新業態「プリンススマートイン熱海」のオープンを控えています。[/p>
これはスマートフォンによる予約や決済、非対面でのチェックインが完結する、利便性を極めた「宿泊特化型ホテル」です。レストランなどの付帯施設を最小限に抑えることで、手頃な価格帯を実現しています。デジタルネイティブな若者や海外からの訪日外国人(インバウンド)を呼び込む戦略であり、街全体の若返りをさらに加速させるに違いありません。
ホテルラッシュの恩恵は宿泊施設内にとどまらず、中心商店街や目抜き通りにも斬新なコンセプトの店舗を誕生させています。地元食材にこだわる企業「レフズ」では、2020年春から非常に興味深い体験型ツアーを開始する予定です。参加者が山に入って間伐材で器を作り、海や川、畑を巡って食材を集め、1年ほどかけて「一杯のスープ」を完成させるという異色の試みになります。[/p>
ただ消費されるだけの観光から、土地を深く知るリピーター育成への挑戦です。このような「関係人口」を増やすディープな試みは、今後の観光業において不可欠な視点となるはずです。素晴らしい温泉という伝統的な財産を守りつつ、最新のテクノロジーやユニークな体験価値を掛け合わせる熱海の戦略は、日本中の観光地に希望を与えています。
かつての栄華を知るシニア層から、SNSで情報を発信する若者世代までを虜にする熱海の勢いは、2020年以降もさらに加速していくことが確実視されるでしょう。
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