スポーツ界で今、非常に興味深い人材育成の仕組みが大きな注目を集めています。2019年に創立100周年という記念すべき節目を迎えた東京大学野球部では、非常にユニークな練習方法が導入されているのです。それは、秀でた技術を持つ部員が他の部員を教える「現役コーチ制度」という画期的なシステムになります。限られた人手を補うための工夫が生んだこの取り組みは、チーム全体の底上げに大きく貢献しているようです。
この画期的な指導法は、幕末の薩摩藩で行われていた「郷中教育(ごじゅうきょうにく)」の仕組みに酷似しています。郷中教育とは、地域の子どもたちが集まり、年長者が年少者に学問や武術を伝承する伝統的な教育システムのことです。東大野球部が実践する学生同士の相互指導には、まさにこの歴史的な教育のDNAが息づいていると言えるでしょう。SNS上でも「これぞ効率的な学びの極み」「現代に必要なシステム」と絶賛する声が上がっています。
教えることで自らも進化する!アウトプットの科学
郷中教育では、正解のない倫理的な問いを互いに議論し、道徳心を育んでいたと伝えられています。こうした深い対話を通じて、指導する側の若者も自らの思考を深め、人間的に大きく成長を遂げたはずです。2020年1月に東大野球部の監督へ就任した元中日ドラゴンズの井手峻氏も、この効果を認めています。他者に技術を論理的に説明するためには、自らの知識を整理して言葉を洗練させる必要があり、コーチ役自身が最も鍛えられるのです。
この「教えることは学ぶこと」という普遍的な原理は、実はプロ野球の現場でも見事に応用されています。2020年1月現在、シーズン開幕に向けて各地で盛んに行われている「合同自主トレ」がまさにその舞台です。球団という組織の垣根を越えてトッププレイヤーたちが集結し、互いに技術を伝承し合う姿が見られます。ライバル関係でありながらも、師弟関係を結んで貪欲に高め合う姿は、現代版の郷中教育そのものだと言えるでしょう。
球団の枠を越えた師弟関係が日本のプロ野球を熱くする
実際に、この相互教育によって素晴らしい成果を残したスター選手たちが数多く存在しています。広島東洋カープの鈴木誠也選手は、かつて福岡ソフトバンクホークスの内川聖一選手を師と仰いでいました。鈴木選手は、毎年素晴らしい実績を残しながらも常に新しい挑戦を続ける内川選手の貪欲な姿勢から、多くの刺激を受けたそうです。一方で、教える側の内川選手も、鈴木選手の鋭い質問によって自分自身の原点を見直す好機を得ていました。
また、読売ジャイアンツの若き主砲である岡本和真選手が長距離打者として覚醒した背景にも、同様のドラマがあります。埼玉西武ライオンズの中村剛也選手から極意を学んだことが、大ブレイクのきっかけとなったようです。ペナントレースが始まればしのぎを削る敵同士となりますが、現役のトッププロ同士が教え合う効果は絶大と言えます。球団の枠を超えたこの美しい師弟関係は、日本野球全体のレベルを確実に引き上げているのです。
編集部が斬る!これからの時代を生き抜く「教え合い」の価値
私は、この「現役同士の郷中教育」こそ、これからの不確実な時代を生き抜くための最強の学習法だと確信しています。上意下達の組織的な指導だけでは、目まぐるしく変化する現代のトレンドに対応することは困難です。最前線で戦うプレイヤー同士がリアルタイムで課題を共有し、言語化して教え合うことで、組織全体に爆発的なイノベーションが生まれます。この素晴らしい成長のスパイラルは、スポーツ界のみならずビジネスの世界にも応用すべきでしょう。
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