日本のものづくりを牽引する自動車業界に、今まさに大きな地殻変動が押し寄せています。ホンダグループの労働組合を束ねる全国本田労働組合連合会(全本田労連)は、2020年1月16日に2020年春季労使交渉の方針を打ち出しました。なんと今回は、基本給を一斉に底上げするベースアップ(ベア)の統一要求を行わないという、異例の決断を下したのです。ネット上では「ついにホンダも」「自動車産業の厳しさがリアルに伝わってくる」といった驚きの声が広がっています。
この決断の背景には、CASEと呼ばれる次世代技術への投資競争や世界的な市場の冷え込みなど、業界を取り巻く環境の急速な悪化が存在します。一律の金額を掲げて横並びで交渉する従来のスタイルでは、変化の激しい荒波を乗り越えられないという危機感の表れと言えるでしょう。これからは一括りの要求ではなく、傘下にある個々の労働組合が、それぞれの経営状態に合わせて柔軟に話し合いを進める形へとシフトしていく模様です。
格差是正への新たな挑戦と各社が直面するシビアな現実
全本田労連はベアの明確な目標額を提示しないものの、指標を求める組合に対しては、上部組織が掲げる「月額3000円以上」という基準を参考値として示す方針を採っています。2019年9月24日頃から本格化した議論を経て、大企業と中小企業の給与格差を埋めるため、企業規模に応じた賃金モデルの提示へと舵を切った形です。SNSでは「一律ベアの終了は寂しいけれど、下請けや中小を守るためには現実的な選択かもしれない」と、この方針に理解を示す意見も散見されます。
他社の動向を見渡すと、日産自動車の系列労組も業績悪化を受けて要求を「月額3000円以上を基準とする」へと緩め、企業の体力に配慮する姿勢を強めています。一方で、業績が堅調を維持しているトヨタグループは、例年通り「月額3000円以上」を目安に掲げており、企業間の明暗がくっきりと分かれる結果となりました。足元の業績に基づいたリアルな交渉が行われる、まさに過渡期の春闘が幕を開けようとしています。
私はこの動きについて、日本の伝統的な「横並び春闘」が終わりを告げ、真の成果主義や企業ごとの自立性が試される時代が来たと確信しています。一律のベア見送りは一見すると労働者側の後退に映りますが、産業全体の持続可能性を守るためには避けて通れない決断だったのではないでしょうか。変化を恐れず、個々の現場に即した柔軟な対話を行うことこそが、次世代の強い自動車産業を育てる原動力になるはずです。
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