多くの尊い命が失われた阪神大震災の発生から、2020年1月17日で四半世紀という大きな節目を迎えました。時の経過とともに、震災を経験していない若い世代が日本社会で確実に増加しています。人々の記憶から当時の記憶が薄れていく「風化」への強い危機感が募る中、災害の教訓や事前の備えをどのように未来へ紡ぐかが問われているのです。悲劇を繰り返さないための取り組みは、日本国内にとどまらず、いまや地球規模での重要なミッションとなっています。
そんな中、被災地である神戸からは、国内外に向けて積極的な情報発信が行われています。国際協力機構(JICA)関西では、海外の行政関係者を対象とした特別な防災研修を実施してきました。これまでにアジアやアフリカをはじめとする118もの国と地域から参加者を受け入れています。この研修は、国連が掲げる持続可能な開発目標、いわゆる「SDGs」が目指す持続可能な社会づくりにも深く貢献しており、世界中から非常に高い注目を集めている模様です。
研修プログラムの一環である「コミュニティ防災」では、被災直後の写真と現在の美しい街並みを比較し、地域の危険度を記した「ハザードマップ」の作成法を学びます。ハザードマップとは、自然災害による被害予測や避難経路を地図上にまとめた、いわば命を守るガイドブックです。これを活用することで、いざという時に住民が自発的に避難や救助へ動く仕組みが整います。SNS上でも「市民レベルの意識改革こそが最大の防御になる」と、多くの共感の声が寄せられました。
過去に大地震を経験したチリから参加した市職員のボリス・サエスさんは、帰国後に地元で防災講座を開講しました。「日本の手厚い防災体制から、地域社会が一致団結して協力する重要性を深く痛感した」と熱く語っています。このように神戸で培われた知恵が、海を越えて世界各国の街を災害から守る盾となっている現実は、非常に誇らしいことではないでしょうか。これこそが、被災地が果たすべき真の国際貢献の姿であると確信いたします。
インバウンドの増加と薄れゆく記憶への危機感
悲惨な記憶を伝える拠点である「人と防災未来センター」には、海外からの団体客が急増しています。2018年度の外国人団体客数は約3万1000人に達し、2013年度と比較して1万4000人以上も増加しました。特にベトナムや韓国、中国といったアジア圏からの訪問が目立ちます。近年、日本を訪れる旅行客である「インバウンド」が右肩上がりに増えている背景が、この驚異的な数字に色濃く反映されていると言えるでしょう。
一方、国内における啓発活動もエネルギーに満ちあふれています。兵庫県によると、震災の教訓を伝えるイベントは2019年度だけで90件以上も企画されました。体験を語り継ぐ語り部活動のほか、音楽コンサートやシンポジウムなど多彩な催しが展開されており、主催者も自治体からNPO法人まで多岐にわたります。こうした草の根の活動が、風化の波を食い止めるための力強い防波堤となっているのです。
しかし、発信に熱が入る裏側には、切実な舞台裏が存在します。神戸市役所において、震災を実際に経験した職員の割合は2019年4月1日時点でわずか41%にまで減少してしまいました。当時、最前線で復旧業務に奔走したベテラン職員たちが定年退職を迎えていることが主な要因です。行政の現場でさえ、当時の生きた教訓をどのように引き継いでいくのかが、極めて深刻な課題として浮き彫りになっています。
日本は今、かつてないグローバル化の潮流の中にあります。政府は2020年に訪日外国人4000万人という高い目標を掲げ、同年の東京五輪や2025年の大阪・関西万博に向けて世界中の視線が集まっています。世界へ悲劇を伝えるだけでなく、言葉の壁を越えて「減災(被害を最小限に抑える工夫)」のノウハウを共有することが急務です。私たち一人ひとりが防災の主役となり、次世代へバトンを繋ぐ強い意志を持つべき時期が来ています。
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