板のりのように手軽に使えて、野菜の栄養がぎゅっと詰まった魔法のような食材をご存じでしょうか。長崎県平戸市に本社を構える株式会社アイルが開発した野菜シート「ベジート」が、今まさに大きな注目を集めています。同社は急増する需要に応えるため、生産体制を現在の3倍にへと大幅に増強することを決定しました。2020年夏までに工場の従業員を増やし、製造機械の改良を進めることで、月間生産量を90万枚規模へと引き上げる計画です。SNS上でも「彩りが良くてお弁当に最高」「離乳食に便利」と大きな反響を呼んでいます。
ベジートの最大の特徴は、独自の技術によって野菜本来の鮮やかな風味や栄養素を2年間もキープできる点にあります。一般的に野菜を加工する際は多くの水が使われますが、アイルは極めて少ない水分でペースト化する技術を確立しました。これを厚さ0.1ミリの極薄シートに成形して乾燥させることで、旨味を閉じ込めることに成功したのです。ニンジンやダイコン、ホウレンソウなど5種類のバリエーションがあり、食感を整えるためにトウガンをブレンドする工夫や、変色を防ぐ徹底した品質管理が施されています。
急成長するカット野菜市場とベジートが持つ無限の可能性
手軽に野菜を摂取したいという現代人のニーズは年々高まりを見せています。独立行政法人農畜産業振興機構の推計によると、2018年におけるサラダなどのカット野菜の国内市場規模は約3960億円にものぼり、今後も拡大が予想される巨大マーケットです。ベジートはすでにイトーヨーカドーやイオン九州といった大手量販店で販売されており、身近な存在になりつつあります。さらにレシピ検索サイトのクックパッドでは、このシートを使ったクレープやサラダなど、約200種類もの魅力的なアレンジレシピが公開されています。
アイルは2006年に、大手証券会社出身の早田圭介社長が立ち上げたベンチャー企業です。野菜のシート化技術に着目した早田社長は、大学との共同研究を重ねて味や食感を劇的に進化させました。2016年には「ニッポン新事業創出大賞」で最優秀賞を受賞するなど、その革新性は折り紙付きと言えるでしょう。2020年3月期の売上高は約1億円を見込んでいますが、今回の増産体制の構築やコンビニなどの小売店との連携、そして本格的な海外輸出への挑戦により、2023年3月期には売上高20億円という高い目標を掲げています。
筆者は、このベジートが現代の食生活だけでなく、地球規模の課題も解決する可能性を秘めていると感じます。長期保存が可能であるということは、深刻なフードロス問題に対する非常に強力なアプローチになるからです。また、野菜が苦手な子どもたちにとっても、おやつ感覚で栄養を摂取できる画期的なツールになるのではないでしょうか。365日の年中無休の生産体制へと舵を切ったアイルの挑戦は、日本の優れた技術が世界の食文化を変える素晴らしい先駆例となるに違いありません。
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