企業がビジネスを展開する上で、常に隣り合わせとなるのが様々な危険性です。内閣府令が定めるルールにより、会社側は投資家の判断を左右するような重大な懸念事項を「事業等のリスク」として有価証券報告書で明かすことが義務付けられています。有価証券報告書とは、企業の業績や財務状況、今後の課題などをまとめた、いわば会社の健康診断書のような公式書類です。記述内容は各企業の裁量に任されていますが、少子高齢化に伴う労働力不足や、米中間の貿易摩擦による景気の先行き不透明感といった世界規模の課題が並びます。
さらに、近年多発している地震や台風といった甚大な自然災害への備え、インターネットを介したサイバー攻撃による顧客情報の流出など、想定されるリスクは実に多岐にわたるのが現状です。SNS上でも「これからの投資は数字だけでなく、災害やセキュリティ対策を読まないと危険だ」といった声が上がっており、企業の危機管理能力に対する関心はかつてないほどに高まっています。激動の時代を生き抜くために、企業がどのような防衛策を講じているのか、多くの市場参加者がその一挙手一挙足に熱い視線を注いでいるのです。
こうした背景を受け、日本企業が2019年に提出した2018年度の有価証券報告書を分析すると、リスクに関する記述量が3年前と比較して4%近く増加していることが判明しました。この傾向は会社の規模が大きくなるほど顕著に表れています。特に日本を代表する大企業が集まる日経平均株価の採用銘柄に絞ると、その記載量は3年前よりも5%以上も増えていました。グローバルに事業を展開し、多角的なビジネスを手掛ける巨大企業ほど、直面する壁や脅威が複雑化している現実が浮き彫りになっています。
私は、この記述量の増加こそが企業の誠実さを示すバロメーターになると考えています。不都合な真実を隠さずに開示する姿勢こそが、結果として市場からの信頼を勝ち取る近道になるはずです。現在の経営環境は変化のスピードが非常に早く、売上高や利益といった目に見える財務情報だけで企業の未来を予測することは極めて困難になりました。そのため、企業の意思決定の仕組みを指す企業統治(コーポレート・ガバナンス)や、災害・テロへの対応力といった「非財務情報」の価値が急速に高まっています。
投資家と企業の間でより深い対話を促すため、金融庁は2020年3月期の有価証券報告書から、これら非財務情報の開示をさらに拡充させる方針を決定しました。ネット上では「形だけの報告ではなく、本質的なリスク開示が進むのは大歓迎だ」と、この変革を前向きに捉える書き込みが目立ちます。これからの投資判断においては、目先の利益だけでなく、企業が時代の変化を読み解く力や、予期せぬ事態に耐えうる柔軟性を備えているかを厳しく見極める眼識が、私たち投資家にも強く求められるでしょう。
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