世界中でデジタル通貨をめぐる動きが急ピッチで進んでいます。スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会でも、この話題が大きな注目を集めておリます。これまで日本や欧州、そして中国などの中央銀行がデジタル通貨の導入に向けて積極的な姿勢を見せる中、世界の金融リーダーであるアメリカの連邦準備理事会、通称FRBもついに独自の調査や研究へ乗り出すことになりました。
これまでアメリカは、デジタル通貨の導入に対して極めて慎重なスタンスを崩しませんでした。スティーブン・ムニューシン米財務長官が「今後5年間はデジタル通貨を発行する予定はない」と明言していたことからも、その警戒感の強さがうかがえます。ネット上でも「ドルがデジタル化されたらセキュリティーは大丈夫なのか」といった心配の声が上がっており、政府や中央銀行の慎重な姿勢に理解を示す意見が少なくありませんでした。
アメリカが現状維持を望む最大の理由は、現在の国際取引における「ドル1強」の圧倒的な優位性にあります。貿易や通貨のやり取りにおいて、米ドルは世界で最も信頼される基軸通貨として君臨しているからです。わざわざ新しい仕組みを取り入れなくても、今のままでいることがアメリカにとって最も利益が大きく、かつ安全な選択肢であると考えられてきたのは当然の帰結だと言えるでしょう。
もし「デジタルドル」を発行した場合、利便性が高まる一方で、目に見えない脅威にさらされる恐れがあります。それが、ネットワークを通じて悪意ある攻撃を行うサイバー攻撃です。万が一、ドルのシステムがハッキングされて通貨が消滅したり盗まれたりすれば、世界経済は一瞬にして深刻な金融危機に陥ってしまいます。利点よりもリスクの方が遥かに大きいと判断されてきた背景には、こうした国家レベルの危機感がありました。
しかし、他国の猛追によってアメリカもいよいよ外堀を埋められつつあります。FRBのジェローム・パウエル議長は2019年11月にアメリカの議員に宛てた書簡の中で、中央銀行が発行するデジタル通貨、いわゆる「CBDC」のメリットとデメリットを慎重に分析していく方針を明らかにしました。国家の信用を背景に持つデジタル通貨の研究がいよいよ本格化することになります。
これに伴い、FRBはデジタル通貨の研究を率いる責任者を外部からスカウトする手続きも開始しました。SNSでは「ついにアメリカも動き出したか」「覇権争いが面白くなってきた」と大きな反響を呼んでおり、時代の転換点を予感させます。通貨のデジタル化は単なる技術の進歩ではなく、世界のパワーバランスを大きく揺るがす可能性を秘めているのです。
筆者の視点としては、アメリカのこの決断は遅きに失した感があるものの、極めて賢明な防衛策だと評価しています。世界に先駆けてデジタル人民元の実験を進める中国の台頭を考慮すれば、ドル単独の現状維持に固執することはむしろ危険です。サイバーセキュリティーの壁は高いですが、デジタルドルの研究は基軸通貨の座を守るために避けて通れない挑戦となるでしょう。
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