フェイスブックが主導する仮想通貨「リブラ」の構想が足踏みするなか、世界各国では中央銀行が発行する法定デジタル通貨、通称「CBDC」への関心がかつてないほど高まっています。この動きの根底には、長らく世界経済を支配してきたドルの圧倒的な力、いわゆる「ドル覇権」に一石を投じようとする各国の思惑が渦巻いているのです。
特に欧州連合は、欧州中央銀行などに対してデジタル通貨の検討を促す提言を行いました。これはリブラへの対抗策であると同時に、自国の通貨安を求めるトランプ政権下で不安定さを増すドル一極体制からの脱却を目指すという、非常に戦略的な意図が隠されています。SNS上でも「ドルの独走が終わるのか」といった驚きの声が広がっています。
中国が放つ「デジタル人民元」の衝撃と国家戦略
こうした世界情勢のなかで、発行が秒読み段階に突入しているのが中国の「デジタル人民元」です。中国の全国人民代表大会は2019年10月26日に、暗号資産に関する新たな法律を可決しました。この法律は2020年01月01日に施行される予定となっており、デジタル人民元を運用するための法的な基盤を整える狙いがあると考えられています。
デジタル人民元の真の目的は、国内決済の利便性向上だけではありません。むしろ国外においてリブラを圧倒し、人民元のネットワークを世界に広げることに主眼が置かれています。リブラはその資産価値の約半分がドルに連動するため、中国にとっては「デジタル化されたドル」も同然であり、これに対抗することは国家の至上命題なのです。
米国との激しい貿易摩擦が長期化するなか、中国は先進国市場からの締め出しに直面しています。今後も成長を維持するためには、「一帯一路」の構想に参加する新興国を中心に、独自の経済圏を構築しなければなりません。そこでは人民元を基軸通貨として流通させることが、経済的な自立を維持するための生命線となるでしょう。
ブロックチェーン技術で米国の監視を回避する
現在、世界の銀行間決済は米国のシステムが中心となっており、ここを遮断されると中国経済は甚大なダメージを免れません。そこで期待されているのが、デジタル人民元の起爆剤としての役割です。ここで活用される「ブロックチェーン」とは、取引履歴を暗号化して分散管理する技術であり、改ざんが困難で透明性が高いという特徴を持っています。
中国はこの技術を用いることで、米国が監視する既存の送金ネットワークとは全く別のルートを構築しようとしています。これにより、海外の利用者に安価でスピーディーな決済手段を提供しつつ、米国の干渉を受けない独自の通貨圏を確立できるのです。これはまさに、対米戦略における通貨・技術両面での覇権争いの核心といえるでしょう。
私は、このデジタル人民元の動きが単なる技術革新に留まらず、地政学的なパワーバランスを根本から変える可能性があると確信しています。既存のルールに縛られない新たな経済圏の誕生は、私たち日本にとっても決して他人事ではありません。通貨という「力」を巡る戦いは、2020年という節目を境に、より熾烈なステージへ突入するはずです。
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