私たちの食卓に欠かせない美味しい豚肉が、今まさに目に見えない脅威にさらされているのをご存じでしょうか。中国をはじめとするアジア圏で猛威を振るっている「アフリカ豚熱(ASF)」という感染症が、日本の上陸寸前まで迫っています。この病気は豚やイノシシに特有のウイルス性疾患であり、高い致死率を持つ一方で、現時点では有効なワクチンや治療法が存在しません。もしも国内の養豚場にウイルスが侵入してしまえば、日本の畜産業界は一瞬にして壊滅的な打撃を受けてしまう恐れがあるのです。
この未曾有の危機を乗り越えるため、国会では異例のスピードで対策が動き出しました。自民党の森山裕国会対策委員長と立憲民主党の安住淳国会対策委員長は、2020年1月22日に会談を行い、対策を盛り込んだ家畜伝染病予防法改正案を2020年1月中に成立させる方針で合意したのです。通常であれば政府が提出した法案は審議に時間がかかりますが、今回は与野党が一致団結し、国会議員自らが発議する「議員立法」という形で、何よりも最優先で法改正を進める決断を下しました。
日本の食を守る「予防的殺処分」の導入とSNSで広がる切実な声
今回の法改正における最大の柱は、感染が確認される前の健康な豚を対象に実施する「予防的殺処分」を可能にすることです。これは、ウイルスの爆発的なまん延(急激に広まること)を水際で食い止めるための、いわば究極の防衛策と言えるでしょう。政府が準備している本予算での法案成立は2020年4月以降になる見通しだったため、一刻を争う殺処分の規定部分だけを先行して切り出し、今月中の早期成立を目指す形となりました。一秒の遅れが致命傷になりかねない状況において、この迅速な政治の判断は非常に高く評価できます。
インターネット上やSNSでも、この電撃的な与野党合意に対して多くの意見が飛び交っています。「普段は対立している政党がこれだけ早く協力するのは、それだけ危機が迫っている証拠だ」と、政治のスピード感を支持する声が目立ちました。その一方で、命を育てる養豚農家の方々の心情を思いやり、「丹精込めて育てた健康な豚まで処分しなければならないかもしれない現実は、あまりにも残酷で胸が痛む」といった切実な書き込みも散見され、現場の苦悩に対する同情と支援を求める輪が広がっています。
命を奪う選択は決して簡単なことではありませんが、日本全体の食の安全と、美味しい豚肉を未来へ残すためには、今ここでウイルスの進撃を阻む強力な盾が必要です。消費者である私たちも人ごとと思わず、海外からの肉製品の持ち込み制限を守るなど、できる対策を徹底していくべきでしょう。国境なきウイルスとの戦いはまさに今、正念場を迎えているのです。
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