自動車の瞳とも言えるヘッドランプの大手メーカー、スタンレー電気の業績にブレーキがかかっています。2019年4月12日から2019年12月31日までの連結営業利益は、前年の同じ時期と比べて約2割も減少した320億円程度にとどまった模様です。この期間としては4年ぶりの減益となり、自動車業界を取り巻く厳しい環境が浮き彫りになりました。SNS上でも「自動車の減産ドミノがサプライヤーを直撃している」「新車が売れない時代の厳しさを感じる」といった、先行きを不安視する声が相次いでいます。
売上高の約8割を占めている主力の自動車向け事業が苦戦を強いられたことが、今回の業績に大きな影を落としました。世界的に新車の売れ行きが冷え込む中、同社の主要な顧客である本田技研工業や日産自動車などが相次いで生産の縮小へと踏み切っています。これに連動する形で、ヘッドランプの出荷も伸び悩んでしまいました。自動車産業は多くの部品メーカーが連なるピラミッド構造であるため、完成車メーカーの動向が部品大手の業績をダイレクトに左右する仕組みになっているのです。
さらに個別車種のトラブルも影響しました。本田技研工業の新型「フィット」が、電動パーキングブレーキの不具合によって発売延期を余儀なくされたことが響いています。LED照明などを扱う電子応用製品事業では、パソコン用液晶バックライトの販売が好調を維持しました。しかし、自動車向けの落ち込みを補うまでには至っていません。また、過去に出荷したランプで不具合が発見され、その交換対応に追われたことも痛手でした。こうした一時的な品質関連の費用が、利益を大きく圧迫する要因となっています。
海外に目を向けると、為替市場における元安・円高の進行が中国事業の利益を目減りさせました。加えて、未来への投資である研究開発費の増加も現在の重荷となっています。同社は現在、ADBと呼ばれる次世代ランプの開発を急いでいます。これは「配光可変ヘッドランプ」とも呼ばれるシステムで、対向車や歩行者に強い光が当たらないよう、照射範囲を自動で緻密に制御して夜間の事故を防ぐ画期的な技術です。このように、安全性を高める先進技術への先行投資が膨らんでいる状況です。
スタンレー電気は2020年1月30日に決算発表を予定しています。2020年3月期の通期見通しは、営業利益が前期比20パーセント減の430億円と厳しい数字を見込んでいます。しかし、ここで失望する必要はないでしょう。なぜなら、自動車の電動化や自動運転化が進む中で、高機能なランプの重要性はむしろ高まっているからです。一時的なリコール費用が収束し、同社の最新技術を搭載した新型車が市場へ投入される2021年3月期には、市場予想で2割以上の大幅なV字回復が見込まれています。
筆者は、今回の減益を一時的な「産みの苦しみ」であると捉えています。目先の利益は減少したものの、事故を未然に防ぐADB技術や、環境負荷を減らす水殺菌用光源といった次世代ビジネスへの投資は着実に進んでいるからです。これらは持続可能な社会において必要不可欠な技術であり、中長期的な競争力の源泉になることは間違いありません。目まぐるしく変化するモビリティ社会の中で、日本のものづくりの強みを活かした同社が、再び力強い成長軌道へ戻る日を楽しみに待ちたいところです。
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