自動車のエンブレムやドアノブに輝きを与えるクロムメッキの世界に、今まさに大きな変革の波が押し寄せています。表面処理薬剤の大手メーカーであるJCUは、2020年1月14日、作業の安全性と環境性能を飛躍的に高める革新的な新薬剤を開発しました。これまで主流だった劇薬の代替として、安全な物質を活用するこの技術は、業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めています。SNS上でも「ついに実用的な代替品が登場したのか」と、技術者を中心に大きな注目が集まっているようです。
私たちが日常的に目にする美しい金属光沢は、樹脂の表面に薄い金属の膜を張るメッキ加工によって作られています。この加工により、雨にさらされてもサビにくく、傷がつきにくいという高い耐久性が実現するのです。しかし、従来の加工法には大きな影が存在していました。製造現場では、酸化力が非常に強く、吸い込むだけで呼吸器系を害するほか、皮膚に触れると発がんのリスクがある「六価クロム」という極めて危険な劇薬が長年使用されており、作業員の健康被害が懸念されていたのです。
世界的な環境規制を追い風に次世代のスタンダードへ
こうしたリスクに対し、ヨーロッパのREACH規則をはじめ、世界中で六価クロムの使用を厳しく制限する動きが加速しています。JCUの根道靖丈基幹技術部長は、日本の自動車メーカーも遠からず自主規制に踏み切ると予測しており、今回の商用化を急ぎました。そこで救世主として選ばれたのが「三価クロム」です。これは自然界にも存在し、人間の体内で糖の代謝を助ける必須栄養素の一種でもあるため、環境や人体への負荷が劇的に低いという素晴らしい特徴を持っています。
しかし、三価クロムは不純物が混ざると加工がうまくいかないという技術的な壁がありました。JCUの新製品は、塩素や有機物をベースにした特殊な添加物を配合することで、六価クロムと同等の時間で円滑に化学反応を進めることに成功したのです。私は、この技術こそが現場の安全を守る究極のイノベーションであると確信しています。コストが従来の2倍程度になるという課題はありますが、働く人々の命や地球環境の未来を守るための投資と考えれば、十分に受け入れられる変化ではないでしょうか。
グローバル展開で目指すさらなる企業成長
JCUはこの新薬剤を新潟県だけでなく、中国やタイ、メキシコといった世界各国の拠点で量産する計画を立てています。国内外の自動車部品メーカーへの猛烈な売り込みがスタートしており、2020年度には薬品売上高に占める新製品の割合を10%以上に引き上げるという挑戦的な目標を掲げました。SNSでは「コスト高をどう克服するかが普及の鍵になりそう」という冷静な意見も見られますが、時代の要請を考えれば、この流れが止まることはないでしょう。
2018年度に248億円の連結売上高を記録した同社は、全売上の約8割を薬品事業が占めるリーディングカンパニーです。すでに2018年度にも前処理工程での代替技術を開発しており、今回の新製品を強力な起爆剤として、2020年度には連結売上高265億円の大台突破を目指しています。安全で持続可能なものづくりへと舵を切ったJCUの挑戦は、日本の製造業が誇る高い技術力と社会的責任のあり方を、世界へ力強く示す素晴らしい好例となるに違いありません。
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