東南アジアの経済を牽引してきた自動車市場に、今まさに大きな地殻変動が起きているようです。主要6カ国における2019年11月の新車販売台数は、前年の同じ月と比べて7%も落ち込み、29万6732台という厳しい結果になりました。とりわけ地域最大級の市場規模を誇るタイでの落ち込みが深刻です。これによって、これまで順調だった通年の実績にも黄色信号が灯り、東南アジア全体で4年ぶりとなる前年割れの危機を迎えていることが明らかになりました。
特にタイの落ち込みは目を見張るものがあり、2019年11月は前年同月比で16%減となる7万9299台にまで冷え込んでいます。この数字は同年に起きた減少の中で最も大きな幅であり、現地でもかなりの衝撃を持って受け止められました。年の前半までは非常に好調を維持していただけに、6月を境にマイナス成長が続いている現状は、市場の急激な変化を物語っています。SNS上でも、現地駐在員や投資家から「タイの勢いが止まった」と驚きの声が上がっています。
世界的な摩擦と足元の「ローン審査」がもたらした冷え込み
これほどまでに販売が急減した背景には、世界規模の経済対立が深く影を落としています。現在も激化が続くアメリカと中国の貿易摩擦は、製造業の拠点である東南アジアにも不況の波をもたらしました。さらに、タイ国内では通貨バーツの価値が跳ね上がる「通貨高(バーツ高)」が進行したため、輸出産業が大きな打撃を受けて景気全体が減速する事態に陥っています。ネット上では「輸出業のボーナスが減れば、そりゃ車も買えない」といった現実的な指摘が相次ぎました。
しかし、最大の原因はもっと身近な生活費のインフレに隠されています。現地では個人の借金を示す「家計債務」が膨れ上がっており、これに危機感を覚えた金融機関が、自動車ローンの審査基準を一気に厳しくしてしまいました。お金を借りて車を買うというハードルが跳ね上がったことで、一般の消費者がディーラーから足遠くなっているのが実情です。いくら新車が欲しくても手が出せないという、購買層のリアルな懐事情がこの冷え込みを生み出しました。
編集部が斬る!この冷え込みは一時的なものか?
私たちは、今回の市場縮小を単なる一時的な落ち込みと捉えるべきではないと考えています。東南アジア、特にタイは「アジアのデトロイト」と呼ばれるほど自動車産業が密集している地域です。ローンが通らないという内憂と、世界貿易の停滞という外患が同時に押し寄せた現状は、新興国経済の脆さを浮き彫りにしました。今後はこれまでのようなガソリン車の大量消費に頼るのではなく、次世代の産業構造への転換を急ぐ必要があるのかもしれません。
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