紙の本の魅力を五感でつむぐ!広瀬奈々子監督の映画「つつんで、ひらいて」が描く、巨匠・菊地信義の装幀世界とは

デビュー作である映画「夜明け」で一躍注目を集めた気鋭の広瀬奈々子監督が、日本を代表する装幀家の菊地信義氏に迫った珠玉のドキュメンタリー映画「つつんで、ひらいて」が現在、全国の劇場で公開されています。装幀とは、本の表紙やカバー、帯、さらには使用する紙の選定までを含めた「本をデザインして仕立てる」大切な作業を指す言葉です。本作は、デジタル化が進む現代にあえて手作業にこだわり、読者の五感に訴えかけるような本作りを続ける菊地氏の姿を克明に映し出しています。

この映画が誕生したきっかけは、広瀬監督が菊地氏の著書である「装幀談義」を読んだことでした。実は監督の亡きお父様も同じ装幀家だったそうですが、当時はその仕事内容を詳しく知らなかったと言います。監督は「本の内側にある世界を、外側へと表現していくという菊地さんの哲学に強く惹かれた」と語っており、偉大な職人への純粋な好奇心が映画の原動力となりました。SNS上でも「本好きにはたまらない映画」「普段何気なく触っている紙の本が愛おしくなる」といった熱い感動の声が広がっています。

劇中では、普段私たちが目にすることのない印刷工場や製本工場の職人技が次々と登場します。広瀬監督は「たった一冊の小さな本を生み出すために、巨大な機械がダイナミックに動いている光景に圧倒された。本が出来上がっていくプロセスの美しさをどうしても映像で表現したかった」と熱弁します。古井由吉氏やモーリス・ブランショ氏といった著名な作家の書籍を手がける菊地氏の情熱を追いかけ、監督は足繁く工場へ通い詰めました。そして、実に4年もの歳月をかけて本作を完成させたのです。

「フィルムに触れた経験がないデジタル世代」を自認する広瀬監督は、次世代を担う若手装幀家の水戸部功氏らにも取材を敢行しました。彼らのデジタルを駆使した仕事への意気込みを聞き出すと同時に、巨匠・菊地氏に対する深い敬意の念を丁寧に紡ぎ出しています。この新旧の対比によって、時代が変わっても色褪せない「本を作る情熱」の本質が、より鮮明に浮かび上がってくるのではないでしょうか。

作中で紹介される菊地氏の「創造性とは関係性である」という言葉に、広瀬監督自身も深く救われたと明かしています。自分だけのオリジナリティーとは何かと思い悩んでいた監督は、他者が存在して初めて自分が成り立つという視点に気づかされ、心が軽くなったそうです。本を作ることは、著者や読者、そして社会との繋がりそのものなのでしょう。情報が溢れる現代だからこそ、職人が魂を込めて作った「紙の本」を手にとり、その温もりに浸る豊かな時間を大切にしたいものです。

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