2020年という新しい幕開けとともに、私たちの生活に身近なポイントやマイルを取り巻く環境が激変しようとしています。これまでは一生懸命に「ためる」ことが主流だったポイントですが、これからは「いかに使ってもらうか」というUX、すなわちユーザーがサービスを通じて得られる顧客体験の質を高める方向へと、各社は大胆な戦略変更に打って出ています。まさに、キャッシュレス決済との融合によって、業界の勢力図が大きく塗り替わる予感が漂っているのです。
SNS上でもこの動きは大きな注目を集めており、「ポイントカードとスマホ決済のアプリを別々に提示するのが面倒だったから、一つにまとまるのは本当にありがたい」「お財布がすっきりする」といった、利便性の向上を歓迎する声が数多く上がっています。ユーザーの多くは、単にお得にポイントがたまること以上に、日常の買い物のなかでどれだけスムーズに、そしてストレスなくポイントを使えるかという快適さを重視していることがうかがえるでしょう。
KDDIとポンタの電撃提携がもたらす4大陣営の勢力図
2019年12月16日、ポイント業界を大きく揺るがす大再編劇が公になりました。共通ポイント「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤリティマーケティングと、携帯大手のKDDIが資本提携を結んだのです。これにより、2020年5月以降にはKDDIの「auウォレットポイント」がポンタへと統合される予定となっています。現在、日本国内で広く普及している共通ポイントには、ポンタのほかに「Tポイント」「dポイント」「楽天スーパーポイント」が存在します。
これらはすべて、国内の主要な携帯キャリアと深く結びついているのが特徴です。Tポイントはソフトバンクと手を結んでおり、dポイントはNTTドコモが自社で運営を行っています。さらに楽天も、2020年内には携帯キャリア事業へ本格的に参入する予定を控えており、今回のKDDIの動きによって、日本のポイント市場は完全に携帯キャリアごとの「4大陣営」へと色分けされることになりました。
「ポイント+決済」の融合がコード決済普及の起爆剤に
KDDIの高橋誠社長は、提携発表の記者会見の席で、自社のコード決済である「au PAY」を活用してポンタをためたり使ったりできるようになることの重要性を何度も強調していました。社会に広く浸透している共通ポイントの巨大な会員基盤は、新しい決済手段を世の中に普及させていくうえで、欠かすことのできない極めて重要なピースです。お買い物におけるポイント付与と決済という2つのアクションが一度の提示で完了すれば、利便性は劇的に向上します。
バーコードやQRコードをスマートフォンで読み取るコード決済ですが、これまではポイントカードとアプリをバラバラに見せなければならないという、日本特有の不便さがありました。今回の融合はこの問題を解決し、コード決済を一般層へ爆発的に普及させる起爆剤になる可能性を秘めています。今後は、この決済とポイントのシームレスな連携を通じて、いかに利用者を自社の経済圏に囲い込めるかが、各社の主戦場になることは間違いありません。
圧倒的なポイント付与量を武器にする後発組の戦略と課題
共通ポイント市場において後発となったネット発祥の楽天や、通信大手のドコモが武器にしたのは、自社サービスを背景にした多額のポイント付与です。コンビニやファストフードなどの街中でのリアルな店舗では、1回あたりの利用額は数百円程度にとどまるため、たまるポイントも微々たるものです。しかし、インターネット通販での買い物や毎月の携帯電話料金の支払いは数千円から数万円にのぼるため、気がつくと大量のポイントがたまっています。
ドコモの発表によると、2019年度上期におけるdポイントの利用額943億円相当のうち、なんと6割近い536億円相当がドコモ以外の街の加盟店で消費されていました。ドコモの田原務ウォレットビジネス推進室長は、回線利用者に付与するポイントの量が圧倒的だからこそ、高い送客効果を生み出せていると自信を覗かせます。しかし、このような原資を削る高還元キャンペーンを小売店が恒常的に維持していくことは、決して容易ではないでしょう。
編集部の一言:ポイントは生活インフラへ。真の勝者を決める鍵
私は、今回の4大キャリアによるポイントの囲い込み合戦は、単なる企業の顧客争奪戦にとどまらず、私たちの決済習慣そのものを変える「生活インフラの再定義」であると考えています。これまでは、どこのお店で買い物をするかによってポイントを使い分けていましたが、これからは自分がどの携帯キャリアを選択しているかによって、日常の決済手段や立ち寄るお店が自然と決まっていくような、より強固な経済圏の縛りが生まれるはずです。
しかし、企業側がポイントのバラマキによる還元競争だけに頼っていては、いずれ体力がすり減ってしまいます。ユーザーが本当に求めているのは、支払いの瞬間に一切のストレスを感じない、極上の決済体験です。ポイントのたまりやすさだけでなく、アプリの起動速度や画面の分かりやすさ、そして使える店舗の多さといった、総合的な扱いやすさを実現できた陣営こそが、2020年以降のキャッシュレス社会の覇権を握るでしょう。
コメント