北海道の経済を支える貿易の現場から、少し気になるデータが飛び込んできました。函館税関が2020年1月23日に発表した2019年の北海道外国貿易概況の速報値によると、輸出総額は3121億900万円となり、前の年に比べて21%も減少したことが判明したのです。さらに輸入総額も15%減の1兆2525億7100万円にとどまり、差し引きで約9405億円という大幅な輸入超過、つまり買い越し状態になっています。輸出入がそろって前年を下回るのは3年ぶりのことです。
SNS上でもこのニュースは注目を集めており、「北海道の経済は大丈夫なのか」「身近な雇用や生活への影響が心配」といった、先行きを不安視する声が数多く上がっています。特に減少幅が大きかったのが化学製品の分野です。2018年には韓国などに約693億円もの規模で輸出されていましたが、2019年には約141億円へと驚くほど急激に落ち込んでしまいました。この急減の背景には、室蘭市にある主要な製造拠点が大きく関係しているようです。
原因となったのは、JXTGエネルギー室蘭製造所が2019年3月31日をもって生産を休止したことです。かつては、原油を蒸留して最初に出てくる基礎的な油である「ナフサ」から、キュメンやトルエン、キシレンといった様々なプラスチックや医薬品の原料となる有機化合物を大量に作り出して海外へ送り出していました。しかし、現在は物流拠点へと役割を変えたため、原材料の仕入れも含めた貿易額が大きく縮小することになりました。
この生産体制の変更による影響は、2020年3月まで色濃く残る見通しとなっています。一連の構造変化は時代の流れとも言えますが、地域に根ざした大企業の動向がこれほどまでに地方都市の貿易額を左右するという事実は、私たちが真剣に受け止めるべき課題でしょう。一つの産業に依存しすぎるリスクを浮き彫りにしており、今後はより多様な産業を道内で育てていく視点が不可欠になると私は強く確信しています。
さらに厳しいことに、落ち込みは化学製品だけに留まりません。自動車部品の輸出は約305億円と31%も減少し、なんと5年連続の前年割れを記録しています。また、内浦湾産のホタテが深刻な不漁に見舞われたことが直撃し、海産物を含む食料品などの分野も14%減少して約681億円となりました。自然の恵みに頼る一次産業の脆弱さや、製造業の苦境が数字となって明確に表れている印象を受けます。
地域別の動きを見ても、輸出拠点の明暗がはっきりと分かれました。室蘭は輸出入ともに50%減と半減し、道内最大の港を持つ苫小牧も輸出が9%減、輸入が3%減と元気がありません。民営化で注目される新千歳空港を抱える千歳でも、輸入が64%減の約348億円と大きく足を引っ張る結果になりました。ちなみに北海道の輸出は、その72%にあたる約2248億円が中国をはじめとするアジア圏へと向かっています。
一方で、私たちの生活に身近な変化も起きています。輸入全体ではエネルギー資源などの鉱物性燃料が23%減と減ったものの、北海道近海で歴史的な不漁が続いている「イカ」のように、国内の不足分を補うために海外からの輸入を増やした品目もあるのです。食卓の定番であるイカを海外に頼らざるを得ない現状は、地元の漁業関係者にとっても苦渋の決断であり、地球温暖化をはじめとする環境変化への対策がいよいよ急務だと感じられます。
税関側は「北海道の貿易は日本全体と比べて、世界情勢の荒波に直接揉まれる度合いは比較的少ない」と分析しています。とはいえ、港や空港を行き交う荷物が減り、地元で作られる輸出品が先細りすることは、巡り巡って地域経済や雇用の縮小を招きかねません。数字の減少を単なる統計として片付けるのではなく、持続可能な北海道の産業をどう再構築していくか、今こそ官民が一体となって知恵を絞るべき転換点に立っていると言えるでしょう。
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