伝統の灯が消えそうになる瞬間は、いつも私たちの胸を締め付けます。宮城県石巻市雄勝町の名振地区において、およそ240年もの長い歴史を紡いできた「おめつき」というお祭りが、深刻な担い手不足により多くの行事を中止せざるを得ない状況に追い込まれました。悪天候による理由以外での中止は、記録がある限りで初めての事態となります。
このお祭りは、県の無形民俗文化財にも指定されている貴重な民俗信仰です。地域では火災を防ぐ「火伏せ(ひぶせ)」の祈願や、大漁、そして子孫繁栄を願って引き継がれてきました。「火伏せ」とは、文字通り火災の災いから人々を守るための祈りを意味する専門用語です。活気に満ちた叫び声が響くはずだった2020年1月24日は、悲しくも静かな1日となりました。
本来であれば、重さ600キログラムにも及ぶ巨大な山車(だし)を約20人の担ぎ手たちが大きく傾けながら、激しく街を練り歩く姿が主役となるはずでした。さらに、男性器をモチーフにした木製の像を用いて繰り広げられる、ユーモア溢れる即興の寸劇もこの奇祭の大きな見どころです。しかし、本年は神事と伝統的な獅子舞のみがひっそりと執り行われるに留まりました。
SNS上では「文化が途絶えるのは本当に寂しい」「何とか形を変えてでも残せないか」といった、存続を惜しむ声が多数寄せられています。主催を担う名振秋葉神社氏子会の総代長を務める和泉誠一郎さんは、山車があってこそのお祭りだと語り、その寂しさを滲ませていました。東日本大震災の津波により、かつて87世帯あった地区は大打撃を受け、現在は36世帯にまで減少しています。
震災後の復興工事に携わっていた作業員の方々が事業の落ち着きとともに去り、高齢化が進む住民だけでは重い山車を担ぐことも、和紙を使った美しい花飾りの準備も難しくなりました。地域の人々を奮起させてきた伝統行事が消えゆく現状に対し、外部からのボランティアをより受け入れやすい仕組みや、土日開催へのシフトなど、時代に合わせた変革が今まさに求められています。
私は、こうした地方の伝統文化の危機を単なる「一地域の過疎化問題」として片付けるべきではないと考えます。震災からの復興とは、単にインフラを元に戻すことではなく、人々の心の拠り所である文化を守ることでもあるはずです。外からの支援を呼び込む新しいコミュニティの形を模索し、このユニークで大切な奇祭がいつか必ず完全な姿で復活することを心から願ってやみません。
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