アジアの安全保障を揺るがす巨大なディールが、緊迫する南シナ海の中心部で動き出しました。かつて米軍が海外に展開した中で最大規模を誇ったスービック海軍基地、その跡地であるフィリピン最大のスービック造船所の買収を巡り、驚きの展開を迎えています。なんと、アメリカの著名な投資会社であるサーベラス・キャピタル・マネジメントと、オーストラリアの造船大手オースタルがタッグを組み、正式に買収の申請を行ったのです。
このニュースが流れると、SNS上では「ついに西側諸国が巻き返しに出た」「南シナ海の生命線が中国に握られなくて本当に良かった」といった安堵の声が相次いでいます。それもそのはず、2019年初頭に韓国の韓進重工業の子会社が莫大な債務不履行を起こして経営破綻して以来、この戦略的要衝を中国企業が虎視眈々と狙っていたからです。今回の米豪連合の参戦は、まさに絶妙なタイミングでのカウンターパンチと言えるでしょう。
現在は造船所の債権団との間で、具体的な条件に関する最終的な協議が進められている段階です。関係者の証言によると、2019年12月中には買収提案の再確認が行われ、早ければ2020年の初頭にもすべての手続きが完了する見通しとなっています。買収の金額などの詳細はまだベールに包まれていますが、この正式提案が認められれば、300ヘクタールという東京ドーム約64個分に相当する広大な敷地を持つ造船所が、劇的な復活を遂げることになります。
ここで、この場所がなぜこれほど注目されるのかを解説します。スービック湾が面する南シナ海は、世界を航行する船舶の約3分の1が通過する海上交通の要衝、いわゆる「シーレーン」です。この海域では、中国が埋め立てによって人工島を建設し、滑走路やレーダーを配備する「軍事拠点化」を急速に推し進めています。地域の緊張が日々高まる中、今回の買収劇は単なるビジネスではなく、各国の防衛戦略が複雑に絡み合うチェスゲームなのです。
中国は南シナ海の8割以上という広大な海域の領有権を主張しており、フィリピンやベトナムなどの周辺国と激しく対立しています。2016年には、国際的な裁判でフィリピン側の主張を認める勝訴判決が下されました。しかし、同年に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領は、インフラ投資などの経済協力を引き出すためにこの判決を棚上げし、伝統的な同盟国であるアメリカとは距離を置くという、独自の外交を展開してきました。
こうした危ういバランスの中で、今回の米豪コンソーシアム(共同事業体)の登場は、フィリピン海軍にとって文字通りの救世主となりました。海軍のロバート・エンペドラッド司令官はインタビューに対し、この買収案を「強力に支持する」と明言しています。安全保障の観点から、国の喉元にある造船所が中国企業の手に渡ることだけは、何としてでも阻止したいという国防の強い意志がそこには滲み出ています。
このオースタルという企業は、米海軍とも深い信頼関係を築いている実力派の上場企業です。現在、フィリピン海軍の巡視船を建造する入札にも参加しており、オーストラリア政府がそれを資金面でバックアップしています。また、相方のサーベラスは元米副大統領が会長を務め、民間軍事会社などを傘下に持つ巨大ファンドです。この強力なバックボーンがあるからこそ、フィリピン海軍も全幅の信頼を寄せているのでしょう。
さらに、驚くべき計画も浮上しています。エンペドラッド司令官は、新しい所有者が決まった暁には海軍が造船所の一部の権益を取得し、ここを主要な海軍基地として活用する方針を示しました。ドゥテルテ大統領も2019年5月に、海軍の存在感を高めるよう指示を出しています。アメリカやオーストラリアの軍艦の修理やメンテナンスを行う拠点としても機能する予定で、西側諸国の防衛ネットワークが再び強固に結ばれようとしています。
この海軍の断固たる姿勢は、経済利益を優先しがちだった他の政府機関をも動かしました。中国企業による買収を当初は歓迎していた貿易産業省も、安全保障上の懸念からその支持を撤回せざるを得なくなりました。一国の大事なインフラが、目先の経済支援と引き換えに他国に掌握されるリスクを、現場の危機感が間一髪で食い止めた形です。国家の主権を守るためには、経済と防衛のバランスがいかに重要かを物語っています。
フィリピン北部では、別の中国企業が要衝の島で大規模なスマートシティ開発を計画するなど、見えない攻防は現在も続いています。しかし、今回のスービック湾を巡る米豪の巻き返しは、南シナ海の一方的な現状変更に待ったをかける大きな一歩になるはずです。一メディアの視点としても、この戦略的要衝が平和と安定の砦として再生することを切に願ってやみません。今後の正式な契約完了のニュースが、今から非常に待ち遠しいです。
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