トルコ経済が1年ぶりにプラス成長へ!通貨危機の爪痕とシリア情勢が投げかける影

トルコ統計局は2019年12月2日、同年7月から9月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比で0.9%の増加に転じたと発表しました。これにより、18年に発生した通貨危機の直後から続いていたマイナス成長にようやく終止符が打たれた形です。しかし、この数字だけで手放しに喜ぶことはできません。足元の景気はひとまず底を打ったように見えますが、人々の生活に目を向けると、通貨危機の深い傷跡が今もなお生々しく残っていることが分かります。

GDPとは、国内で一定期間に生み出された付加価値の総額を指し、その国の経済活動の「勢い」を測る最も重要な指標です。今回のプラス転換は一見ポジティブですが、内訳を見ると不安が募ります。経済の屋台骨である個人消費は1.5%増と伸び悩み、企業の設備投資などを示す総固定資本形成にいたっては12.6%減と激しく落ち込んでいます。これは、多くの企業が将来への投資を控え、経済のエンジンが空回りしている現状を浮き彫りにしているのです。

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深刻さを増す雇用問題と若者の苦悩

SNS上では、今回の発表に対して「数字上の回復と実感がかけ離れている」といった悲痛な声が相次いでいます。それもそのはず、直近の2019年8月の統計では失業率が14%に達し、前年から3ポイントも悪化しました。特に深刻なのは15歳から24歳の若年失業率で、27%という1988年以降で最悪の水準を記録しています。仕事を探しても見つからない若者が街に溢れる状況は、社会の安定を根本から揺るがしかねない極めて危険なサインといえるでしょう。

最大都市イスタンブールでは、5カ月も仕事がないという塗装工の男性が「年金の支払いすら難しい」と嘆く姿が見られます。建設ラッシュに沸いたかつての面影はなく、住宅の新築やリフォーム需要は激減しました。失業者数はこの1年で約100万人も増え、合計465万人に達しています。貯蓄の少ない低所得層にとって、この雇用難は死活問題です。政府がいくら景気回復を強調しても、国民の台所事情が冷え切っている以上、真の春は遠いと言わざるを得ません。

外交リスクがリラ安を再燃させる懸念

トルコが抱える問題は国内経済だけではありません。2019年10月に踏み切ったシリア北部への軍事侵攻は、国際社会から激しい非難を浴びています。2019年12月3日からロンドンで開催されるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議では、米欧諸国からトルコへの厳しい追及が予想されます。トルコがロシアへ接近する姿勢も見せており、こうした安保・外交面での火種は、投資家がトルコの通貨リラを売る大きな材料になりかねないのです。

個人的な見解を述べれば、現在のトルコ経済は「薄氷の上」にあります。エルドアン大統領は販売が好調な一部業種を挙げて楽観論を振りまきますが、専門家が指摘するように、若年人口が増え続けるトルコでは年4%近い成長がなければ雇用を維持できません。国際社会との協調を欠いたままでは、再びリラ安が加速し、物価高騰が国民を苦しめる悪循環に陥るでしょう。今必要なのは数字の粉飾ではなく、信頼回復に向けた外交努力と、実効性のある雇用対策だと強く感じます。

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