シェアリングエコノミーの未来を左右する大きな転換期が訪れました。2019年12月に欧州連合の最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は、アメリカの民泊仲介大手であるエアビーアンドビーを「情報社会サービス」と位置づける判断を下したのです。これは「不動産業者としての規制を適用すべきだ」と主張していたフランスの旅行業界側の訴えを退けた形となります。この決定に対して、ネット上では「新しいビジネスモデルが認められた画期的な判決だ」と歓喜する声が上がっています。
今回の司法判断を受けて、エアビーアンドビーの共同創業者であるネイサン・ブレチャージク氏は、前向きな一歩として歓迎する意向を表明しました。最先端のデジタルサービスとして公認された形ですが、だからといって今後の経営が完全に自由になったわけではありません。これまでにない新しい旅のスタイルを提案し、登録物件数が700万件を超える世界的な企業へと成長した同社ですが、その影響力の大きさは350億ドルとも言われる企業価値に現れています。
しかし、2008年の創業からこれまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。提供された物件が犯罪に利用されたり、人種差別問題が発生したりと、多くの課題に直面してきたのです。見知らぬ旅行者が急増したことで地域社会の平穏が脅かされ、SNS上でも「近隣トラブルが心配」という否定的な意見が散見されました。こうした不安を解消するために、同社は掲載物件の審査を厳格化し、苦情を受け付ける24時間窓口を設置するなど信頼回復に努めています。
さらに、各地域の規制当局との関係構築にも力を注いでいます。民泊が地域経済にもたらす影響を客観的なデータで証明し、本来なら宿泊者が支払うべき税金を代行して徴収し、地元の自治体に納める仕組みを作りました。その納税額は4年間で20億ドルに達しています。新しいルール作りを目指す500以上の都市と連携を進めており、これこそが同社の強みと言えるでしょう。斬新なサービスほど社会に摩擦を生みやすいため、負の側面を解消して初めて本当の「革新」を達成できるのです。
現代は、人工知能やIoTと呼ばれる「モノのインターネット」技術、ロボット工学が急速に進化する大転換期にあります。同時に、自分好みにカスタマイズされたサービスを好むミレニアル世代やZ世代が台頭してきました。デジタルツールを駆使して若者の心を掴めば短期的な急成長は可能ですが、一過性の流行で終わらせないためには、社会の仕組みそのものをアップデートする覚悟が求められます。
産業革命の歴史が証明する新ルール構築の必要性
歴史を振り返ると、19世紀の産業革命期にも鉄道や蒸気船といった新技術が普及し、経済が飛躍的に発展した一方で、過酷な労働環境などの深刻な社会問題が噴出しました。これに対応するため、イギリスでは労働者を守る工場法が制定され、アメリカでは市場の独占を防ぐ反トラスト法、いわゆる独占禁止法が誕生したのです。当時の人々は、下水道や公園、健康保険、公立学校といった、現代の私たちが当然のように利用している社会インフラを必死に生み出しました。
第4次産業革命が進行する現代においても、全く同じことが言えるでしょう。単に利益を追求するだけでなく、歴史的な使命感を持って新しい社会基盤を築く気概がなければ、人々の共感を得ることはできません。ネットでの評判を見ても、現代の消費者は企業の社会的責任を非常に重視していることが分かります。社会的な課題に真摯に向き合う姿勢こそが、これからのテック企業に求められる一等地なのです。
同様に、相乗りサービスを展開するアメリカのウーバーテクノロジーズも、激しい変化の波に揉まれています。スマートフォンで手軽に車を呼べる仕組みは世界を席巻し、単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」という新しい働き方を定着させました。しかし、本拠地であるカリフォルニア州では、立場の弱い労働者を保護するため、彼らを個人事業主ではなく正規の従業員として扱うよう義務付ける法律が、2020年1月に施行されたのです。
ウーバーテクノロジーズはこの法律を巡って州を提訴しましたが、自由な働き方を理想とするならば、働く人々が安心して活動できるセーフティネットを構築する責任も企業側にあります。格差や貧困といった難問から逃げずに挑戦する姿勢こそ、21世紀に大きく飛躍するスタートアップ企業に必須の条件ではないでしょうか。目新しいテクノロジーで既存の市場を破壊するだけの時代は、すでに終わりを迎えていると私は確信しています。
東南アジアで急成長を遂げたインドネシアの「ゴジェック」は、まさにその模範例です。未発達だった公共交通機関を補いながら多くの雇用を生み出し、企業価値が10億ドルを超える未上場企業、いわゆる「ユニコーン企業」へと成長しました。彼らは配車を支える運転手たちの生活向上を第一に考え、ローンの提供や資産形成の支援を行っています。社員が定期的に運転手の家庭を訪問し、本音を汲み取る泥臭い努力を続けているのです。
2020年1月にアメリカで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES」でも、アップルやフェイスブックの担当者がデータ活用と個人のプライバシー保護について熱い議論を交わしました。これからの時代に名を残す起業家を目指すのであれば、クリアすべきハードルは高くなる一方です。しかし、この厳しい変化を楽しみながら社会に貢献する仕組みを作ることこそが、現代のビジネスにおける最大の醍醐味と言えます。
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