千葉県市原市に、日本のエネルギー産業の未来を担う巨大な戦略拠点が誕生しています。出光興産が2017年10月1日に隣接する製油所と石油化学工場を組織統合して発足させた「千葉事業所」です。この統合により、海外から調達した原油を精製する段階から、身の回りのプラスチックや合成繊維の基礎原料へ加工するまでの全工程を一元管理できるようになりました。原材料や製造エネルギーを融通し合うことで、海外勢に対抗できる圧倒的な生産効率と強固なコスト競争力を日々高めています。
その敷地面積は382万平方メートルに及び、東京ディズニーランドの約7.4倍という驚きの広さを誇ります。広大な場内には原油や石油化学製品を蓄えるタンクが整然と立ち並び、ガソリンや軽油などの燃料はもちろん、エチレンや自動車部品の素材となるポリプロピレンなど、実に多彩な製品が日々生み出されています。事業所長を務める荒木伸二執行役員は、統合によって原料の調達から最終製品の製造に至るまで、完全に最適化された生産体制が実現したと強い自信をのぞかせます。
この統合メリットは、無駄を徹底的に排除する資源の相互循環にあります。例えば、製油所の過程で生じる余剰のナフサ(粗製ガソリン)は、そのまま石化工場に送られてエチレンの原材料へと生まれ変わります。さらに、石化工場側の製造過程で発生した水素を、製油所の脱硫装置(原油に含まれる硫黄分を取り除く設備)で再利用するという、極めてスマートな連携が日常的に行われているのです。これほど無駄のない資源の有効活用は、事業所が一つになったからこそ成し得た技だと言えます。
SNS上でもこの取り組みは注目の的となっており、「日本のものづくりの意地を感じる効率化だ」「工場萌えだけでなく、技術の融合にもワクワクする」といった好意的な声が多く寄せられています。一見すると別々に見える産業が手を取り合う姿は、現代の製造業における理想的なモデルケースとして一般の生活者にも好印象を与えているようです。単なるコスト削減にとどまらず、産業の枠組みを超えたイノベーションとして捉える向きも少なくありません。
昭和シェルとの経営統合で広がるネットワークと次世代EV市場への挑戦
同事業所の改革は、敷地内だけにとどまりません。出光は2019年4月1日に昭和シェル石油と経営統合を果たし、国内の工場ネットワークはさらに拡大しました。近隣には、質の低い原油からガソリンなどの高付加価値な製品を高確率で抽出する優れた技術を持った、旧昭和シェル系の製油所も存在しています。こうした近隣拠点とのさらなる連携強化に向け、今後は本格的な協議が進められる方針となっており、地域一帯を巻き込んだ広域的な協業体制の構築に大きな期待が集まります。
現在の石油・石化業界は、原油価格の国際的な変動に振り回されやすく、台頭する海外の巨大資本との熾烈な価格競争に晒されています。この荒波を生き抜くためには、徹底した生産性の向上はもちろんのこと、他社には真似できない独自の高付加価値製品を開発することが何よりも不可欠です。市場のコモディティ化(製品の均一化)を防ぎ、独自の強みを持つことこそが、これからの日本の製造業が国際舞台で生き残るための絶対条件であると私は確信しています。
そんな中、千葉事業所が次世代の命運を握るエースとして見据えるのが、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)樹脂という高機能プラスチックです。これは出光が独自に開発した革新的な素材で、結晶構造を規則的に配列させることで、従来のプラスチックを遥かに凌ぐ高い耐熱性と軽さを両立させています。現在、世界中で普及が進む電気自動車(EV)の部品向けとして需要が爆発的に伸びており、2016年には生産能力を3割も増強して世界への拡販に弾みをつけています。
「千葉事業所を高機能製品のマザー工場として、さらにその技術を磨き上げていく」と荒木事業所長は未来を見据えています。新体制となった出光昭和シェルが、そのビジネスの舞台を世界へと大きく広げていく中で、この新生・千葉事業所が果たす役割はこれまで以上に大きくなるでしょう。日本のエネルギーと素材産業の底力を世界に示すシンボルとして、同事業所が発信する最先端の変革から、今後も決して目が離せそうにありません。
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