中国政府が打ち出した海外への団体旅行禁止措置により、関西の宿泊業界がかつてない激震に見舞われています。新型肺炎の感染拡大に伴う宿泊予約のキャンセルが相次いでおり、多くのホテルがその対応に頭を抱えているのが現状です。各施設ではアルコール消毒液を増設するなど、館内の衛生管理という目前の感染予防策を急ピッチで進めています。しかし、突然生まれてしまった大量の空室を埋めるための決定打はいまだに見いだせておらず、関係者の間では焦りの色にじんでいるのです。
この深刻な状況に対して、SNS上では「楽しみにしていた旅行が中止になるのは悲しいけれど、安全第一だから仕方が不自然ではない」「ホテルの経営が持ちこたえられるか心配だ」といった、同情や不安の声が数多く寄せられています。さらに「これを機に、国内旅行のプランが充実するなら応援したい」というポジティブな意見も見られました。事態が長期化の一途を辿れば、これまでの中国人観光客に依存していたインバウンド戦略を根本から見直し、新たな顧客層を呼び込むための施策が必須となるでしょう。
名門として知られるリーガロイヤルホテルでは、2020年1月25日から2020年2月末までの宿泊予約において、すでに団体客144室分もの解約が発生いたしました。同ホテルでは即座に対策本部を設置し、共有スペースにおける消毒清掃の回数を大幅に増やすなどの厳重な防衛策を講じています。今後は現在リニューアルを進めている富裕層向けの高層階フロアを最大の武器として活用し、日本国内をはじめとする世界の富裕層をターゲットにした誘客活動でこの難局を乗り切る方針を掲げました。
しかしながら、競合他社が空室を埋めるために宿泊料金を大幅に引き下げる、いわゆる「価格破壊」に踏み切る可能性も否定できません。リーガロイヤルホテルの蔭山秀一社長は、もともと低価格ホテルの台頭によって客室単価が下落傾向にある現状を指摘した上で、ここからさらに激しい値下げ合戦が巻き起こることに強い危機感を募らせています。価格競争の泥沼化は、業界全体の体力を削りかねない重大な死活問題と言えるでしょう。
一方で、ビジネスホテルを全国展開するスーパーホテル(大阪市)のように、個人客をメイン層とする企業では現時点での大きな実害は出ていません。それでも過去に世界を震撼させたSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行期には、客室単価が1000円から2000円ほども急落した苦い過去があります。SARSとは、2003年頃に大流行したコロナウイルスによる深刻な呼吸器疾患のことです。当時の記憶があるだけに、同ホテルの担当者も今回の新型肺炎がもたらす同様の市場冷え込みに不安を隠せない様子でした。
こうした逆風の中、ホテルニューオータニ大阪は中国人客の落ち込みを国内のレジャー需要で補うという、攻めの姿勢を見せています。間もなく迎える春の行楽シーズンをにらみ、自社の会員組織に向けたプロモーション活動を一段と強化する構えです。このように、インバウンド一辺倒だった構造からいち早く脱却し、国内市場(ドメスティック市場)へシフトチェンジできるかどうかが、これからの生き残りをかけた極めて重要な分かれ道になるのではないでしょうか。
京都市観光協会が市内の58ホテルを対象に実施した緊急調査によれば、回答のあった25施設のうち、実になな割にのぼる17施設が宿泊キャンセルによる経営への打撃を「非常に大きい」または「大きい」と回答しました。2020年1月29日の大阪・道頓堀では、団体旅行の禁止令によってあれほど賑やかだった中国人観光客の姿が急激に減少しています。一刻も早い事態の終息を願いつつ、日本の観光業が持つ底力と柔軟な方向転換に期待がかかります。
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