岩手県の沿岸部で、いま水産業の未来をかけた新たな挑戦が始まっています。秋サケの記録的な不漁が続くなか、漁業協同組合や自治体が連携し、サケ・マス類の「試験養殖」に相次いで乗り出しているのです。これは、ただ魚を獲るだけではなく、自ら育てて収穫する「育てる漁業」への大きな転換と言えるでしょう。
2020年1月から大槌町の新おおつち漁業協同組合が日本水産などと協力して始めたプロジェクトをはじめ、宮古市や久慈市でも積極的な取り組みが続いています。地域の大切な資源であるサケを守り、特産品としてのブランドを確立することで、地域全体を盛り上げようという熱い想いが伝わってきます。
「獲る」から「育てる」へ、新たなビジネスモデルの構築
新おおつち漁業協同組合が挑むのは、海で育てるニジマス「トラウトサーモン」と「ギンザケ」の養殖です。2020年1月中には、大槌町吉里吉里地区沖に巨大な円形のいけすを2基設置しました。トラウトサーモンは刺し身や寿司ネタとしての需要が高く、一方のギンザケは成長が早いという特徴があります。
「育てる漁業」において、いけす(生簀)とは魚を囲い込んで飼育するための施設のことです。新おおつち漁協では、合計6万匹の稚魚を放ち、2020年夏には100トンの水揚げを目指しています。ゆくゆくは年間2000トンから3000トンの生産規模を想定しており、加工から販売までを町内で完結させる体制づくりに意欲を燃やしています。
SNS上でもこの動きには注目が集まっており、「不漁が続く中で希望の光になるかもしれない」「地元のブランドサーモンが食卓に並ぶのが待ち遠しい」といった期待の声が寄せられています。漁業関係者にとって、従来のやり方を変えることは勇気がいることですが、生き残りをかけた挑戦として多くの人が注目しているのです。
環境の変化に適応し、ピンチをチャンスに変える
この動きを後押ししているのは、極めて厳しい現状です。岩手県水産振興課の発表によると、2019年度の沿岸の秋サケ漁獲量は、2020年1月20日時点で1835トンにとどまりました。これは2018年度の同じ時期と比べてわずか20.6%という衝撃的な数字です。
宮古市や久慈市でも、サケ漁を補完する役割として養殖への期待が高まっています。海水温の上昇など、原因の特定が難しい環境の変化がサケの回帰に影響を与えている現在、養殖はまさに「ピンチをチャンスに変える」ための切り札になり得るはずです。私自身、自然の恵みに頼るだけでなく、知恵と技術で安定的な生産を目指すこの姿勢は、これからの地域産業のあり方として非常に理にかなっていると感じます。
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