私たちの生活やビジネスに欠かせない「紙」の需要に、いま大きな変化の波が押し寄せています。日本製紙連合会が発表したデータによると、2019年11月の紙と板紙を合わせた国内出荷量は202万1000トンにとどまり、前年の同じ時期と比べて5.4%のマイナスを記録しました。これで4カ月連続の減少となり、業界内では危機感が強まっています。この背景には、2019年10月に実施された消費税率引き上げに伴う、一時的な駆け込み需要の反動が長引いていることが挙げられるでしょう。
特に落ち込みが目立つのは、私たちが日常的に目にするコピー用紙やチラシといった「印刷・情報用紙」の分野です。これらは前年同月比で6.4%減の58万4000トンまで落ち込んでおり、紙全体の減少を牽引する形となりました。SNS上でもこのニュースに対し、「いよいよ本格的なペーパーレスの時代が到来した」「オフィスのデジタル化が進めば、さらに需要は減るのではないか」といった、将来の動向を冷ややかに見守る声が数多く寄せられており、世間の関心の高さが窺えます。
ここで専門用語について少し解説を加えましょう。「紙・板紙(かみ・いたがみ)」とは、本やノートに使う一般的な紙と、段ボールなどの厚手な紙の総称です。また「情報用紙」とは、パソコンのプリンターで使う用紙などを指します。これらは景気の動きを敏感に映し出す鏡のような存在ですが、スマートフォンの普及や企業の業務効率化が進む現代において、構造的な需要の縮退が起きていることは間違いありません。今回の減少は、単なる増税の反動だけではない根深い問題を孕んでいます。
私個人の見解としては、この出荷量減少を単なる不況のシグナルと捉えるべきではないと考えます。むしろ、社会全体が環境負荷を減らすサステナブルな社会へ移行している証拠ではないでしょうか。製紙業界も手をこまねいているわけではなく、脱プラスチックに向けた紙製パッケージの開発など、新しい価値の創出に挑んでいます。時代の転換期だからこそ、従来の大量消費に頼らないビジネスモデルの構築が、これからの素材産業を生き抜く鍵になるはずです。
セメントや伸銅品も苦戦!素材業界全体に広がる減速傾向
厳しい状況に直面しているのは、決して紙の業界だけではありません。同じ2019年11月の統計を見ると、建設現場に不可欠な「セメント」の国内販売量も373万7667トンと、前年同月比で5.7%減少しました。さらに、電子部品や自動車の材料として広く使われる「伸銅品(しんどうひん)」の生産量にいたっては、13.5%減の6万2011トンと大きな落ち込みを記録しています。このように、日本のものづくりやインフラを根底から支える主要な素材の数字が、軒並みマイナスを示しているのです。
「伸銅品」とは、銅に亜鉛などを混ぜて加工した板や棒のことで、ハイテク産業の健康状態を測るバロメーターと言えます。これほど大幅な減少が続く背景には、世界的な貿易摩擦による製造業の停滞が影を落としていると推測されます。ネット上では「消費税だけでなく、世界経済の冷え込みがダイレクトに響いている」「工場の稼働率が下がっているのではないか」といった懸念の声が上がっており、多くのビジネスパーソンが今後の動向を不安視している様子が伝わってきます。
一方で、住宅の土台などに使われる「国産針葉樹合板(こくさんしんようじゅごうはん)」の在庫量は、前月比で7.5%減少の11万9021立方メートルとなりました。在庫が減ることは一見すると好調の証に見えますが、これは需要が旺盛というよりも、メーカー側が市場の冷え込みを警戒して生産調整を行った結果である可能性が否定できません。素材産業全体の動きを俯瞰すると、国内の需要は全体的に一歩後退した踊り場にあると言わざるを得ない状況です。
このような素材全体の減速を目の当たりにすると、日本経済の足腰が試されているのだと痛感します。しかし、需要が減ったからといって悲観するばかりでは何も始まりません。これを機に、国内の製造業は高付加価値な製品へのシフトを急ぐべきです。例えば、単に量を売るビジネスから、環境性能や耐久性を極限まで高めた素材を提供するビジネスへの転換が求められます。ピンチをチャンスに変える、日本の技術力の底力に期待したいところです。
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