私たちの生活に欠かせない「紙」の存在がいま、大きな転換期を迎えています。日本製紙連合会が発表した2020年の紙と板紙の国内需要見通しによると、総需要は前年比1.7%減の2494万2000トンにと留まる見込みです。これでなんと10年連続の前年割れとなり、需要のピークだった2000年当時の8割未満にまで縮小することになります。時代の流れとはいえ、かつての勢いを知る身としては寂しさを禁じ得ない数字でしょう。
この減少の背景にあるのは、急速に進む「デジタルシフト」です。スマートフォンやタブレットの普及により、かつてオフィスや家庭で大量に消費されていた印刷・情報用紙(コピー用紙やパンフレットなど)や新聞用紙の出番が著しく減っています。SNS上でも「確かに新聞や雑誌を買う機会が激減した」「ペーパーレス化は時代の必然」といった声が多く上がっており、生活者のライフスタイルが根本から変わっている様子がリアルに伝わってきます。
一方で、少し意外な動きを見せているのが「板紙(段ボールなどの厚い紙)」の領域です。インターネット通販の爆発的な普及に伴い、宅配用の段ボール需要はこれまで右肩上がりを続けてきました。しかし、2020年は包装を簡素にする「簡易包装化」の波が押し寄せており、その成長スピードにブレーキがかかると予想されています。過剰な梱包を減らすエコな取り組みは、地球環境の視点からも大変素晴らしいことだと私は確信しています。
さらに細かく中身を見ていくと、カタログやチラシといった紙媒体の削減が響き、洋紙全体の需要は3.2%減の1313万4000トンまで落ち込む見通しです。そんな苦境のなかで唯一の希望となっているのが、ティッシュやトイレットペーパーといった「衛生用紙」でしょう。こちらは前年比0.8%増の203万3000トンと堅調な伸びを予測しており、インバウンド需要や清潔志向の高まりが下支えしていると考えられます。
私たちは今まさに、紙の価値が「情報を伝えるメディア」から「生活を支える実用品」へと完全にシフトする瞬間を目撃しているのではないでしょうか。デジタル化の手軽さは魅力的ですが、紙ならではの質感や温もりが持つ価値も忘れたくはありません。製紙業界には、この大逆風をイノベーションの好機と捉え、環境に配慮した新しい素材開発など、次の時代に向けた挑戦を大いに期待したいところです。
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