私たちの生活に欠かせないインフラや農業を陰で支えている素材が、今まさに注目を集めています。建材や農業用フィルム、電線など幅広い用途で活躍する「塩化ビニール樹脂」の2019年における総出荷量が、前年を上回る見込みであることが分かりました。塩ビ工業・環境協会が発表した2019年1月から11月までのデータによると、国内と輸出を合わせた出荷量は約155万トンに達し、前年の同じ時期と比べて5%も増加しているのです。
塩化ビニール樹脂、通称「塩ビ(プラスチックの一種)」は、軽くて加工しやすく、耐久性に優れているのが特徴です。SNS上でも「地味だけど現代社会を支える最強の素材」「建築現場には絶対欠かせない」といった声が上がっており、その重要性が再認識されています。同協会は2019年通期の出荷量を165万トンから170万トン程度と予測しており、2018年の162万トンを確実に超える、非常に明るいニュースといえるでしょう。
国内の苦戦を救ったのはインド?輸出が18%増と大躍進
今回の好調の背景を読み解くと、非常に興味深い構造が見えてきます。実は2019年1月から11月の国内向け出荷に限ってみると、前年同期比で2%減の94万7841トンと、やや落ち込みを見せていました。東京五輪に向けた首都圏の都市再開発により、電線関連の需要は旺盛だったものの、建材に使われるパイプなどの「硬質用」や、フィルムなどの「軟質用」が、後半の建築・農業の低迷に引きずられる形で苦戦を強いられたためです。
この国内の足踏みをカバーし、全体の数字を大きく押し上げた救世主が「輸出」です。同期間の輸出量は60万4218トンと、なんと前年比で18%もの大躍進を遂げました。この背景には、最大の輸出先であるインドの関税政策が変更され、日本産の塩ビが価格競争力で圧倒的優位に立ったという劇的な市場の変化があります。ネット上では「外交や政策の風を味方につけた日本の製造業は強い」と感嘆するコメントが飛び交っています。
2020年は5G投資が鍵!半導体装置向け需要の復活に期待
塩ビ協の横田浩会長(トクヤマ社長)は、2020年の見通しについて「大きな変動はなく前年並みを維持する」との見解を示しています。国内ではスマートフォンや自動運転を支える次世代通信規格「5G」への投資がいよいよ活発化する見込みであり、これが大きな起爆剤になるでしょう。5Gの普及によって、2019年に減少が続いていた半導体製造装置向けの塩ビ平板需要が劇的に回復へと向かう可能性が極めて高いと考えられます。
私たちは、塩ビのような基礎素材の動向から最先端テクノロジーの未来を予測することができます。一見すると地味な素材ですが、5Gという時代の変革期において、その存在感はさらに増していくはずです。天候に左右されやすい農業用フィルムや建築資材の復調も期待される中、グローバルな関税の追い風を維持しつつ、日本の技術力が世界をリードし続ける姿を、私は一人の編集者として今後も熱く見守っていきたいと感じています。
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