古都・京都が今、世界のエネルギー産業を揺るがす「蓄電の都」として熱い注目を浴びています。1895年に日本初の鉛蓄電池が誕生したこの地では、現在、リチウムイオン電池を超える「ポストリチウム」を巡る開発競争が、かつてない熱量で繰り広げられているのです。
SNSでも「スマホの充電が瞬時に終わるかも」「電気自動車の航続距離が劇的に伸びそう」といった期待の声が続出しています。京都には、長年培われた電子部品やセラミックスの技術基盤があり、それが次世代電池という新しい形となって結実しようとしています。
リチウムを超える「シャトル電池」と老舗のプライド
注目を集めるのは、精華町に拠点を置くコネックスシステムズです。同社が開発中の「シャトルバッテリー」は、鉄の酸化還元反応を利用して水素を作り出す画期的な仕組みを採用しています。2019年12月06日現在、2022年の販売開始を目指して調整が進んでいます。
この電池の凄みは、理論上のエネルギー密度が従来のリチウムイオン電池の約5倍に達する点でしょう。安価な鉄を使用するため、製造コストを大幅に抑えられるメリットもあります。まずは非常時のバックアップ電源としての実用化が計画されており、そのポテンシャルは計り知れません。
また、島津製作所の流れを汲むGSユアサも黙ってはいません。同社は世界初の電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池を量産した実績を誇ります。現在は、希少金属であるコバルトの使用量を減らした低コストモデルの開発に加え、次世代の本命とされる「全固体電池」の研究に心血を注いでいます。
安全性を極めた「全固体」と「全樹脂」の衝撃
ここで専門用語を整理しましょう。「全固体電池」とは、電池内部の液体(電解液)をすべて固体の材料に置き換えたものです。液体は漏れや発火のリスクがありますが、固体にすることで安全性が劇的に向上し、さらに急速充電が可能になるという夢のような特徴を持っています。
村田製作所は、この全固体電池をウェアラブル端末向けに小型化し、2020年度から月産10万個のペースで量産する体制を整えました。2019年10月に開催された「CEATEC 2019」では経済産業大臣賞を受賞するなど、その技術力は公的にも高く評価されています。
一方で、三洋化成工業が提唱する「全樹脂電池」も革命的です。これは電池の部材を金属から樹脂(プラスチックの一種)へ変更する技術です。部品点数を減らせるため、コストを最大6割も削減できる可能性があります。同社は2021年初頭にも新工場の建設を検討しており、全固体以上の安全性を自負しています。
京都の伝統技術が支える「未来のエネルギー」
京セラが2020年秋から量産を開始する新型電池も、引き合いが止まりません。電解液を粘土状にして電極に練り込む独自技術により、製造コストを3割削減することに成功しました。住宅用蓄電システム向けに、すでに滋賀県の工場の供給能力を超える予約が入るほどの人気ぶりです。
さらに、京都大学では「全固体フッ化物イオン電池」という、従来比10倍以上のエネルギー密度を目指す究極の研究も進んでいます。トヨタ自動車らとの共同研究であり、これが実現すればスマートフォンの充電頻度は週に一度で済むような、劇的な生活の変化が訪れるかもしれません。
私は、この京都の動きこそが日本の製造業の底力だと確信しています。セラミックスや界面活性剤といった一見地味な基礎技術が、最新のエネルギー問題解決の鍵を握っているのは非常に痛快です。海外勢との競争は激化していますが、「蓄電の都」が世界のスタンダードを握る日は近いでしょう。
コメント