2020年2月4日、セイコーエプソンが12年ぶりとなるトップ交代を発表しました。4月1日付で現社長の碓井稔氏が会長へ退き、新たに取締役常務執行役員の小川恭範氏が社長へと昇格します。経営環境が激変するなかでのバトンタッチに、社内外から大きな注目が集まっています。SNS上でも「老舗メーカーの変革に期待したい」「サブスク戦略でどう変わるのか楽しみ」といった期待の声が上がっており、次なるリーダーの舵取りに関心が高まっているようです。
小川次期社長は、自身の登板について「会社全体を見る覚悟はできていた」と語り、厳しい現状を冷静に受け止めています。彼が掲げるのは、従来型の「作って売り切る」モデルからの脱却です。例えば、プリンター市場では紙への印刷需要が減少傾向にありますが、彼はここを「顧客接点」という視点で見つめ直そうとしています。デジタル技術を駆使し、継続して利益を生み出すモデルへの転換こそが、エプソンの生き残りをかけた重要課題なのです。
「サブスク」でつなぐ顧客との新たな関係性
この変革の象徴となるのが、プリンターの「サブスクリプション(継続課金)」サービスです。これは、製品を一度売り切るのではなく、月額料金などを支払うことで継続的に利用してもらう仕組みです。私自身、この戦略には非常に強い可能性を感じています。単に製品を届けて終わりにするのではなく、顧客の利用状況に合わせたサービスを提供し続けることで、企業とユーザーの間には強固な信頼関係と、安定的なビジネスサイクルが構築されるからです。
また、インクジェットプリンターのポテンシャルについても小川氏は自信を見せています。「究めて極める」という先代からの教えを胸に、価格競争力や製品の改良余地は依然として大きいという見方です。2020年3月期には利益が半減する厳しい決算が見込まれていますが、彼は焦って奇策に走るのではなく、プリンターヘッドの外販といった収益源の多様化や、未来の成長を見越した「商品の仕込み」を着々と進めていく構えです。
不透明な時代に挑む、ワクワクする組織づくり
米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの拡大といった外部環境について、小川氏は「甘い見通しは持っていない」と断言します。しかし、恐怖するのではなく、厳しい状況を前提として準備を整えるという現実的な姿勢が、逆に頼もしく感じられます。新体制では、経営の透明性を高めるガバナンス(企業統治)を重視し、執行の権限を新社長に集中させながら、碓井会長は適度な距離から助言を行う体制を構築する予定です。
最後に、小川氏が何よりも重視しているのは「社員の幸福」です。彼が目指すのは、社員一人ひとりが楽しみながら仕事をし、そこから出たアイデアで社会をワクワクさせる会社です。大勢の知恵を集める環境づくりに意欲を燃やす彼の言葉には、技術者出身らしい実直さと、人への深い愛情が感じられます。トップが変わるこの節目に、エプソンがどのような化学反応を起こし、新しいビジネスの形を世に問うのか、引き続き注視していきたいものです。
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