健康管理の常識が今、大きく変わろうとしています。2020年2月6日、ヘルスケアスタートアップのHERBIOが発表したのが、おへそに装着するだけで「深部体温」を連続計測できる画期的なウエアラブル体温計「Picot(ピコット)」です。深部体温とは、体の内部の温度のことで、実は心身のさまざまな変化を非常に鋭敏に映し出す鏡のような存在といえるでしょう。
これまで深部体温を測るには、直腸に温度計を挿入するなど、身体的な負担や違和感が避けられない手法が一般的でした。しかし、近年の研究により、おへそは汗腺がないため汗の影響を受けにくく、実は体の深部の温度変化を極めて正確に捉えられる場所であることが分かってきたのです。Picotはこの特性に着目し、小型の円盤状デバイスをへそに固定するだけで、体温の推移を1分から10分間隔で自動記録します。
命を守るための「体温の見える化」
この技術がもたらす可能性は計り知れません。装着中のデータは専用のスマートフォンアプリと無線で連携され、グラフとして手元でいつでも確認が可能です。1回の充電で約35時間の連続測定ができるため、睡眠中や日中の体温変化も逃さず捉えられます。これにより、熱中症や感染症の兆候、ストレス状態、さらには睡眠の質といった、従来は見落とされがちだった身体のサインを早期に発見できるのです。
開発の背景には、体温という極めて身近な指標を、もっと健康管理に役立てたいという強い願いがあります。特に、乳児や高齢者は体調の変化を言葉で伝えるのが難しく、熱中症や感染症で重篤な事態に陥るリスクが高いといえます。田中彩諭理社長が「体温の変化を把握することで救える命は多い」と語るように、異常をいち早く検知して警告する機能は、まさに家族の安心を守る強力な盾となるはずです。
広がるビジネス活用と未来への展望
この取り組みには社会的な反響も大きく、既に建設現場や製造業など、過酷な暑さの中で働く人々を守るための法人活用が期待されています。実際に2019年にはフジクラと共同で熱中症対策の実証研究を行っており、個人差の大きい「熱中症のかかりやすさ」に対して、データに基づいた最適な予防法を提供しようと試みています。今夏までに法人向け展開をスタートし、その後11月には医療機器承認を経て、一般向けにも月額500円前後でサービスを開始する予定です。
私個人としても、このサービスには非常に大きな期待を寄せています。これまで体温計といえば「風邪を引いたときに測るもの」でしたが、これからは「日常的に健康の傾向を知るためのデバイス」へと進化していくでしょう。自身の体調をデータで客観的に知ることは、予防医療の第一歩となります。単なるガジェットを超えて、私たちの生活を根本から変えるポテンシャルを秘めたこの製品に、今後も大いに注目していきたいですね。
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