高齢者の自動車事故が社会問題となる中、その解決に向けてダイハツ工業が取り組んだ画期的なプロジェクトをご存じでしょうか。2016年末、国土交通省からの協力要請を受けて始まったのが、後付けの安全装置「つくつく防止」の開発です。ダイハツが国内で抱える約980万台の既販車に向け、高齢者の方々が安心して運転できる環境を整えようという熱い想いが、このプロジェクトを動かしました。
しかし、開発の道のりは決して平坦なものではありませんでした。2017年1月、社内では「既販車への後付けは非常に困難である」という報告が上がります。新車であれば最初から安全装置の組み込みを前提に工場で生産できますが、長く乗られている中古車は経年劣化や個体ごとの状態が異なるため、取り付けのハードルが極めて高かったのです。それでも当時の三井正則社長は、「困っている人へ貢献するのがメーカーの役割だ」と強く決断し、開発が本格的に始動しました。
不可能を可能にする執念の開発と「つくつく防止」の仕組み
開発チームが直面した最大の難題は、限られたスペースへの搭載とコスト管理でした。彼らは車型ごとに中古車を買い集め、センサーや電子制御ユニット(ECU)を設置できる場所を一台ずつ模索し続けました。ここで専門用語の「ECU」について解説しますね。これは「Electronic Control Unit」の略で、エンジンの噴射量やブレーキ動作などを電子的に制御する、いわば車の頭脳にあたる部品です。これらを最適な価格で提供できるよう、部品選びから設計まで徹底した工夫が凝らされました。
こうして完成した「つくつく防止」は、超音波センサーを用いて前後方3メートル以内の障害物を検知します。誤ってアクセルを強く踏み込んだ際、燃料の供給を約8秒間カットして急発進を抑制する仕組みです。取り付け費込みで約6万円という価格設定も、多くの人に普及させるための大きな努力の結果といえるでしょう。SNS上でも「これなら実家の親にも勧められる」「安心を買うと考えれば安い」といった称賛の声が多く見受けられます。
普及に向けた新たな挑戦と編集者の視点
どれほど優れた製品でも、実際に使ってもらわなければ意味がありません。ダイハツは自治体のイベントや2019年11月の東京モーターショーでの体験会など、認知拡大に奔走しています。興味深いのは、単に高齢者層へ訴求するだけでなく、原宿で若年層のインフルエンサーを招いたイベントを開き、孫の視点から安全の重要性を伝えるという新しいアプローチにも挑戦している点です。
私個人としても、この取り組みは素晴らしいと感じています。「自分は大丈夫」という過信を解くのは至難の業ですが、大切な家族からの勧めであれば心に届くはずです。技術的には燃料カットで減速させるシンプルな構造ですが、これまで誤作動ゼロという実績も信頼性を裏付けています。今後さらに精度が向上し、悲しい事故がひとつでも減ることを心から願ってやみません。メーカーとしての誠実な姿勢が、未来の安全を支えていくことでしょう。
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