映画見放題が無料?図書館向け配信「カノピー」の魅力と閉鎖に追い込まれる意外な裏事情

アメリカではネットフリックスやアマゾンプライムなどの動画配信サービスが乱立し、まさに群雄割拠の時代を迎えています。そんな中、主要なリストには載らないものの、極めて質の高い「完全無料」のストリーミングサービスが存在することをご存じでしょうか。その名は「カノピー(Kanopy)」といい、大学や公立図書館の利用者を対象にした特別な配信プラットフォームなのです。対象施設のメンバーであれば、自宅にいながら名作映画を実質タダで楽しむことができます。

カノピーが掲げるテーマは「思慮あるエンターテインメント」です。一般的な商業配信とは一線を画し、ドキュメンタリーや文学作品、インディーズ(独立系映画)やクラシック名作など、3万点以上の奥深い作品を取り揃えています。ハリウッドの娯楽大作とは異なり、じっくりと知性を刺激する作品に出会えるため、映像研究者からも絶賛されているのです。SNS上でも「一生モノの映画に出会える」「これが無料なんて信じられない」といった驚きの声が広がっています。

しかし、この「無料」の裏側には、ちょっと複雑な仕組みが隠されているのをご存じでしょうか。実は、私たちが支払うべき視聴コストを、大学や図書館が肩代わりしているのです。カノピーは映画の制作者や配給会社を支援する目的もあり、得た収入の半分を彼らに還元しています。そのため施設側の負担は決して安くありません。非公開とされる価格体系ですが、視聴回数に応じてライセンス料が膨らむため、利用者が増えるほど施設は財政難に陥ってしまいます。

この重い負担に、海外の名門施設も苦渋の決断を迫られる事態となりました。2019年にはスタンフォード大学が「持続不可能である」としてアクセス制限に踏み切っています。さらに、ニューヨーク市内の公立図書館も映画の配信を断念し、本や電子書籍の提供に専念することを決めました。2008年にオーストラリアでDVD提供から始まったカノピーは、世界中へとサービスを拡大してきましたが、この「見放題」の時代において施設の出費は青天井となっています。

地域のコミュニティスペースとして愛される図書館を守るためにも、私たちはこの現実に目を向ける必要があるでしょう。利用者がお得に文化を楽しめ、クリエイターにも正当な報酬が渡り、同時に図書館の経営も圧迫しない。そんな新しいビジネスモデルの登場が、今まさに待望されているのではないでしょうか。便利で魅力的なサービスだからこそ、持続可能な形で未来へ残していくための知恵を、社会全体で絞っていく時期に差し掛かっているのです。

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