映画界に突如として現れた若き天才、ビー・ガン監督の最新作『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』が2020年2月28日にいよいよ日本で公開を迎えます。わずか30歳という若さでありながら、世界中から熱い視線を浴びる彼の登場は、まさに現代映画界における最大の事件と言えるでしょう。
前作のデビュー作で世界を震撼させた彼は、巨匠アンドレイ・タルコフスキーやウォン・カーウァイを彷彿とさせる「映像の詩人」として高く評価されています。SNS上でも「これまでにない映像体験ができそう」「一味違う中国映画が観られる」と、アート映画ファンの間で公開前から異例の盛り上がりを見せています。
本作は、父親の逝去をきっかけに生まれ故郷へと舞い戻った男性が、かつて心を通わせた神秘的な女性の幻影を追い求める物語です。芸術性を極限まで追求した「アート系映画」と呼ばれるジャンルでありながら、中国国内では公開初日だけで興行収入41億円という信じられないほどの大ヒットを記録しました。
一般的にアート系映画とは、商業的な娯楽性よりも監督独自の芸術表現や思想を色濃く反映した作品を指します。難解と思われがちなこのジャンルがこれほど大衆を魅了した理由は、後半から1時間も続く「3Dでのワンカット長回し」という、前代未聞の映像マジックに隠されているのです。
夢と現実を繋ぐ3D長回しの映像魔術
映画の後半、物語の舞台が夢へと移り変わる瞬間に、観客は3Dメガネをかけるよう促されます。そこから始まるカメラを一度も止めずに撮影する「長回し」の手法は、観客を現実から切り離し、主人公の記憶の迷宮へと完全に没入させる効果をもたらしているのです。
ビー・ガン監督は、温め続けてきた「記憶と夢」というテーマについて、これらは人間を優しく癒やす力を持っていると語ります。映画を通じて他者と心を通わせたいと願う彼は、観客と主人公、そして監督自身が映画館という暗闇の中で、同じ夢を共有するような共感覚を目指したのでしょう。
物語の舞台となる貴州省凱里は、監督自身の故郷であり、少数民族が暮らす豊かな文化が息づく場所です。劇中でヒロインが身にまとう鮮やかな深緑のドレスは、この緑豊かな美しい町の象徴でもあります。個人の思い出と社会の記憶が複雑に絡み合う様子が、映像美として見事に昇華されています。
10代から詩を紡いできた彼だからこそ、言葉を超えた映像の詩学で、現代社会における個人の在り方を問いかけることができるのではないでしょうか。単なる娯楽に留まらない、映画史に深く刻まれるであろうこの奇跡の映像体験を、ぜひ劇場で見届けてみてください。
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