2020年2月7日に公開される映画『37セカンズ』が、いま世界中で大きな話題を呼んでいます。メガホンをとったのは、米国を拠点に活躍する新鋭監督HIKARIさん。脳性まひを抱える女性が自らの意志で人生を切り拓いていく物語は、各地の映画祭で喝采を浴び、ハリウッドからオファーが殺到するほどの熱量を帯びているのです。
物語の主人公は、漫画家を目指す23歳のユマです。ある日、アダルト漫画誌の編集者から「実体験が足りない」と指摘を受けた彼女は、車椅子で歓楽街へと繰り出します。その旅路で、障害者や介助者、そして性風俗に従事する人々との出会いを通じ、ユマは自らの身体と生き方に真正面から向き合い始めます。
リアリティが突きつける、優しさの真価
HIKARI監督は、執筆にあたり多くの当事者に取材を重ねました。「下半身に障害があっても、出産や快楽を享受することは可能。女性の体は素晴らしい」という信念のもと、命の尊厳を真っ直ぐに描いています。特筆すべきは、主人公を実際に障害を持つ佳山明さんが演じている点でしょう。
「嘘は描きたくない」と語る監督は、お涙頂戴の感動ドラマという安易な枠組みを拒絶します。これは、障害者と健常者の間に存在する目に見えない「壁」を、映画というツールを用いて物理的に壊そうとする試みなのです。この姿勢に対し、SNS上では「障害の有無を超えた人間の普遍的な欲望と自立に心が震えた」「誰もが抱える葛藤を、これほどポジティブに描いた作品はない」といった賞賛の声が溢れています。
映画監督という、物語を伝える希望の手段
大阪で育ち、18歳で渡米したHIKARI監督の経歴も異色です。舞台芸術や美術を学んだ後、一度は女優やカメラマンとして活動しましたが、30歳を前に映画制作の道へ転身しました。「ただのエンターテインメントなら、私が作る必要はない」と彼女は言い切ります。
私自身、この言葉に強い感銘を受けました。監督にとっての映画とは、社会をポジティブな方向へ変えるための装置なのです。人々が他者に優しくなれるようなメッセージを届けることこそが、彼女の制作の根幹にあります。ようやくスタートラインに立ったばかりのHIKARI監督が、これからどんな壁を壊し、新しい景色を見せてくれるのか。いま、私たちはその歴史的な瞬間を目撃しようとしているのです。
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