アダム・ドライバー主演!映画『ドン・キホーテを殺した男』テリー・ギリアム監督が30年の執念で完成させた奇跡の傑作【シネマレビュー】

構想からなんと30年もの歳月を費やし、幾度もの頓挫を乗り越えてついに完成した奇跡の映画が誕生しました。2020年1月24日に公開を迎えたテリー・ギリアム監督の最新作『ドン・キホーテを殺した男』は、映画ファンの間で大きな話題を呼んでいます。そのあまりに過酷な制作舞台裏は、2002年にドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』として公開されたほどです。数々の悲劇を乗り越えてスクリーンに届けられた本作に対し、SNSでは「ついにこの日が来た」「ギリアム監督の執念に涙が出た」と、映画ファンの熱い感動の声であふれ返っています。

メガホンを取ったギリアム監督は、イギリスの伝説的コメディ集団「モンティ・パイソン」に所属した唯一のアメリカ人アニメーターとして知られています。映画監督へと転身した後は、1985年公開の『未来世紀ブラジル』や1995年公開の『12モンキーズ』といった、映画史に名が残る衝撃的な作品を世に送り出してきました。彼の持ち味は、毒のある奇妙な世界観の中に、どこか切なく美しい抒情性を同居させる点にあります。世界中に熱狂的なフォロワーを持つ、まさに唯一無二の異端児と呼べるシネマ作家でしょう。

物語の主人公は、アダム・ドライバーが演じるCM監督のトビーです。スペインでの撮影中にトラブルが重なり、彼はすっかり行き詰まっていました。そんな折に、かつて学生時代に自分がこの地で撮影した自主映画『ドン・キホーテを殺した男』のDVDを思いがけず手に入れます。当時は熱い映画への夢を抱いていたものの、現在は商業主義のCM制作に追われる日々を過ごしていました。かつての情熱を取り戻そうと当時のロケ地を再び訪れたトビーは、運命的な再会を果たすことになります。

彼を待っていたのは、かつてトビーの自主映画で主役に抜擢された靴職人のハビエルでした。彼は年老いた結果、自分を本物の騎士「ドン・キホーテ」だと思い込み、トビーを忠実な従者である「サンチョ・パンサ」だと信じ込んでいたのです。見世物にされていた老人をトビーが救出しようとしたところ、不慮の火災が発生して警察に拘束される事態へと発展します。この自分を騎士と信じる老人と、かつての夢を追いかける映画監督の姿は、まさにこの映画を何十年も諦めなかった監督自身の姿に重なり、胸が熱くなります。

本作を鑑賞すると、数多くの出資者から受ける注文や、過去の名声と現在の仕事を比較される苦悩など、ギリアム監督が実際に味わったであろう映画界の現実がリアルに伝わってきます。物語の随所に、不可能に挑み続ける反骨精神と、狂気をはらんだ独特のユーモアが激しくきらめいているのです。万人に愛される娯楽作ではないかもしれませんが、彼の描く世界は息をのむほど美しい「極上の悪夢」と言えます。諦めずに戦い続けるすべての人に、深い勇気を与えてくれるでしょう。

映画のラストには、かつてドン・キホーテ役に決定しながらも、この世を去るなどして出演が叶わなかった2人の名優の名前が静かにスクリーンに映し出されます。この演出には、完成までに費やされた果てしない時間の重みが凝縮されており、深い余韻を残しました。上映時間は2時間13分となっており、見応えは十分です。映画という名の夢を追いかけ続けた男たちの熱いドラマを、ぜひ劇場の大きなスクリーンで体験してみてください。

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