2019年11月、日本中に大きな感動を呼び起こす歴史的な出来事がありました。実に38年ぶりとなるローマ教皇フランシスコの来日です。この貴重な瞬間に立ち会い、深い感銘を受けたのが作家で写真家の星野博美さんでした。彼女はNHK長崎放送局の特番にゲスト出演し、核兵器廃絶へのメッセージが発信された浦上の爆心地公園から、教皇の姿を間近に見守る幸運に恵まれたのです。
当日の朝、長崎は激しい悪天候に見舞われました。バケツをひっくり返したような豪雨と稲光が響き渡る中、人々は雨合羽を重ね着して必死に教皇を待ち望みます。しかし、その後のミサ会場では奇跡が起きました。まるで天が味方したかのように雲が晴れ渡り、真夏のような青空が広がったのです。会場に教皇が現れると、地鳴りのような大歓声が沸き起こりました。
周囲の信徒たちが涙を流して喜ぶ姿に、星野さんも思わず目頭を熱くしたそうです。彼女の脳裏に浮かんだのは、かつて「東洋のローマ」と呼ばれた長崎で、過酷な弾圧に耐え抜いたキリシタンたちの歴史でした。キリシタンとは、戦国時代から江戸時代にかけての日本におけるキリスト教信者の呼び名です。彼らは激しい迫害や禁教令、さらには原爆の悲劇をも乗り越えてきました。
SNS上でも「これほどの苦難を抱えてきた長崎だからこそ、教皇の祈りが深く染み渡る」「400年もの間、信仰を守り抜いた人々の思いを想像すると涙が止まらない」といった感動の声が数多く寄せられています。今回の教皇来日は、長崎の人々にとってどれほど大きな救いと慰めになったことでしょうか。星野さんの言葉からは、その計り知れない喜びがリアルに伝わってきます。
星野さんには、大切にしている宝物があります。それは、かくれキリシタンの末裔が手作りした「ロザリオ」です。ロザリオとは、カトリック教会で聖母マリアへの祈りを捧げる際に、回数を数えるために使用する数珠状の聖具を指します。熱心にキリシタンの取材を続けてきたキャスターの山本美穂さんから譲り受けたこの品は、単なる記念品ではなく、今も生き続ける信仰の証です。
筆者は、このエピソードに現代人が忘れてしまいがちな「心の絆」の強さを強く感じました。脈々と受け継がれてきた祈りの歴史は、決して過去の遺物などではありません。ロザリオを手にするたびに、400年前の先祖たちの祈りと現在の長崎が一本の線でつながっていることを実感するという星野さん。その強い想いは、私たち読者の心にも確かな温もりを届けてくれます。
コメント