アパレル業界がかつてない苦境に立たされる中、メーカーの枠を超えて「自ら素材を作る」という驚きの潮流が生まれています。これまで生地メーカーに依存していた服作りを根本から見直し、独自の繊維を開発することで、価格競争から脱却しようとする動きが加速しているのです。
カジュアル衣料大手の「アダストリア」は、2019年11月、ウールの魅力を再現しながら弱点を克服した新素材「WOOLLY TEC(ウーリーテック)」を発表しました。これはポリエステルやレーヨンなどを絶妙に配合した多機能素材で、従来のウールよりも約20%もの軽量化に成功しています。
天然のウールは暖かく高級感がある一方で、重さや価格の高騰、安定供給の難しさが課題でした。しかし、この新素材なら見た目の膨らみを維持しつつ、コートの価格を従来の7割程度に抑えられます。手頃な価格で高品質を楽しめると、SNSでも驚きの声が広がっているようです。
アダストリアは2019年11月07日から、「グローバルワーク」や「ニコアンド」といった人気8ブランドでこの素材の展開を開始しました。消費者の財布が固くなる中、独自素材による「軽さ」と「安さ」の両立は、冬のファッション市場を席巻する強力な武器になるでしょう。
環境と機能性を両立する次世代の「エシカル素材」
一方、マッシュホールディングスは、旭化成とタッグを組んで環境配慮型の新素材「サスティナレッチ」を開発しました。これは「サステナビリティ(持続可能性)」に配慮し、工場の縫製過程で捨てられるはずだった糸を再利用して作られる、地球に優しいリサイクル素材のことです。
この素材の凄いところは、単にエコなだけでなく、UVカットや吸水速乾、さらに触れた瞬間に冷たく感じる「接触冷感」などの高い機能性を備えている点にあります。2020年03月からは、人気ブランド「エミ」のタンクトップやレギンスとして店頭に並ぶ予定となっています。
また、ゴールドウインも2019年12月に、人工たんぱく質繊維を用いたアウトドアジャケットを発売します。山形県のスタートアップ、スパイバー社と連携したこの技術は、石油資源に依存しない次世代の衣料として、世界中のファッショニスタや環境意識の高い層から熱い視線を浴びています。
私自身の見解として、今回のような「素材からの差別化」は、単なるコスト削減以上の価値があると感じます。ユニクロが「ヒートテック」で証明したように、素材そのものがブランドの指名買いを生む時代です。独自の物語を持つ服こそが、今の消費者の心を動かすのではないでしょうか。
これからのアパレル企業は、ただデザインを競うだけではなく、どれだけ「科学」の視点で服を進化させられるかが勝負の分かれ目となります。セールに頼らず、素材の魅力で正々堂々と勝負する各社の姿勢は、ファッションの未来を明るく照らす一石となるはずです。
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