多くの企業がSNSを駆使して自社商品やイベントの情報を日々発信しています。一般的にはフォロワーの数が成功の指標とされがちですが、それだけで本当に狙った客層を獲得できているのでしょうか。東京・渋谷に拠点を構える「BOKURA」は、そんな従来のSNS運用の常識に疑問を投げかけ、企業や団体の熱心なファンを増やす新しい支援事業を展開して注目を集めています。
ネット上では「公式アカウントから個別に温かいコメントをもらえて嬉しい」「ただの宣伝ではなく、親近感がわく」といった好意的な声が溢れており、SNSでの反響も上々です。同社の宍戸崇裕社長は、単にフォロワーの数字を追い求める手法には限界があると指摘します。そこでBOKURAが実践しているのが、エゴサーチという手法を駆使した、非常にきめ細かいユーザーとのコミュニケーションです。
エゴサーチとは、インターネット上で自社の名前や商品名がどのように語られているかを検索して調べる行為を指します。BOKURAは顧客である企業名や、親しみを込めた愛称が含まれる投稿を能動的に検索します。そして、その投稿内容に合わせた最適な返信を公式アカウントから届けるのです。この地道な双方向のやり取りが、ユーザーのエンゲージメントを高める鍵となります。
エンゲージメントとは、消費者とブランドとの間の深い信頼関係や愛着度のことです。丁寧な返信を受け取ったユーザーは、その企業をさらに好きになり、自身のフォロワーへその体験を共有してくれるでしょう。こうした連鎖によって、企業のブランド力を支える熱狂的なコアファンが自然な形で全国へ広がっていくと、宍戸社長は確かな手応えを感じています。
プロスポーツチームを起点に広がる地域密着型のビジネスモデル
この独自のファン開拓手法は大きな支持を集め、利用する企業や団体は2020年1月16日現在で約300に達しています。中でも同社が特に情熱を注いでいるのが、プロバスケットボールやプロサッカーなどのスポーツ領域です。現在は大学を含めた17ものチームを支援しており、BOKURA自らがスポンサーとしてチームを支えるケースも少なくありません。
スポーツチームにはもともと地元を愛する熱心なファンが集まりやすいため、同社のSNS活用ノウハウとの相性が抜群です。さらに、同じチームを応援する地元の有力企業と繋がれる機会も多く、新たな顧客獲得の場としても機能しています。ファン、チーム、地元企業の三者を繋ぐ、非常に合理的かつ血の通ったビジネスモデルであると言えます。
現在はスタッフが手作業で投稿の検索や文面の作成を行っていますが、同社は業務効率化を目指し、人工知能(AI)を用いた自動化システムの開発を進めている段階です。私は、デジタルが普及した現代だからこそ、こうした「人の温かみ」を感じるコミュニケーションが価値を持つと考えます。AIの技術と人間の感性が融合すれば、SNSはさらに強力な絆を生む場所になるはずです。
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