2019年11月、上海の街は熱気に包まれていました。世界中の有力企業が集結した「中国国際輸入博覧会」において、日本を代表する企業であるパナソニックが、かつてないほどの存在感を放っています。中国国営中央テレビ(CCTV)の朝の看板ニュース番組では、同社の特集が華々しく組まれ、多くの視聴者の注目を集めました。
この番組内で、パナソニックの本間哲朗専務執行役員が流暢な中国語でインタビューに応じる姿は、まさに圧巻の一言でしょう。「まずは中国で製品やサービスの革新(イノベーション)を巻き起こし、それを世界へと羽ばたかせる」という力強いビジョンは、中国市場を単なる製造拠点ではなく、最先端の創造拠点と捉える同社の覚悟を象徴しています。
今回の輸入博覧会でパナソニックが確保した展示スペースは、外資系企業として最大級の面積を誇りました。この広大なブースには、中央官庁や地方政府の幹部が続々と足を運んでいます。さらに特筆すべきは、習近平国家主席と世界の名だたる大企業トップとの記念撮影において、本間氏が習主席のすぐ真後ろという極めて重要なポジションに陣取ったことです。
こうした破格の待遇は、パナソニックが中国共産党や政府から事実上の「お墨付き」を得たことを意味しているのでしょう。SNS上でも「パナソニックの本気度がすごい」「日中関係の新しいフェーズを感じる」といった驚きの声が上がっています。国家レベルの信頼を勝ち取ったことは、ビジネスの加速においてこれ以上ない追い風となるはずです。
苦難の歴史を乗り越えて:友好のシンボルが直面する真価
しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。パナソニックは、中国の「改革開放」を牽引したトウ小平氏からの熱烈な要請を受けて進出した、日中友好の象徴とも言える存在です。改革開放とは、1970年代末から中国が対外開放にかじを切り、経済を近代化させた歴史的な政策を指しますが、同社はその一番の功労者でした。
それにもかかわらず、2012年に発生した反日デモの際には、同社の工場が襲撃され、放火されるという悲劇に見舞われています。政治の荒波に翻弄され、物理的な被害を受けた過去は、今もなお記憶に新しいところでしょう。友好の証であったはずの企業が、一転して憎しみの対象となるという不条理を、彼らは身をもって経験してきたのです。
現在の蜜月関係は喜ばしいものですが、国際情勢は常に流動的です。編集部としては、もし再び日中関係が悪化した際に、中国社会がどのようにパナソニックを受け入れるのか、その動向を注視せざるを得ません。真の信頼関係とは、順風満帆な時ではなく、困難に直面した時にこそ試されるものであり、それこそが企業の真価と言えるのではないでしょうか。
中国市場という巨大な海を渡るパナソニックの挑戦は、まだ始まったばかりです。政府からの厚い信頼を盾に、彼らが掲げる「中国発のイノベーション」が、2019年11月22日現在の世界経済にどのようなインパクトを与えるのか、その期待は高まるばかりです。歴史の教訓を胸に、彼らが歩む次の一歩から目が離せません。
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