永井荷風が綴る森鴎外の真実|孤独な天才の背中を追った、愛惜と耽美の文庫オリジナル編集版

近代日本文学の歴史において、耽美主義の旗手として異彩を放った永井荷風。彼が終生、文学の師と仰ぎ、深い敬意を払い続けた人物こそが文豪・森鴎外です。2019年12月14日に発売された中公文庫の『鴎外先生』は、荷風の視点から師の素顔や功績を紐解く、珠玉の一冊といえるでしょう。

「耽美主義(たんびしゅぎ)」とは、道徳や功利性よりも、ひたすら美の享受や創造に最高の価値を置く芸術上のスタイルのことです。世俗的な価値観に縛られない荷風だからこそ、時代を先取りしすぎていた鴎外の孤高な魂に、誰よりも敏感に共鳴できたのかもしれません。

本書の見どころは、何といっても荷風による熱烈な鴎外論です。特に『渋江抽斎』に代表される鴎外の「史伝小説」がいかに重要であるかを説く評論は圧巻です。史伝小説とは、実在した人物の生涯を徹底した史料調査に基づいて描く手法で、日本文学に新たな地平を切り拓きました。

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孤独な天才の背中を見つめて

荷風はかつて、鴎外の背中を遠くから見つめる際、時代に先行しすぎた者が抱える独特の寂寥感を感じずにはいられなかったと述懐しています。この繊細な洞察は、同じく時代の波に抗いながらペンを握り続けた荷風自身の鏡合わせの感情だったのではないかと、私は強く感じます。

SNS上では「荷風の鴎外に対する愛が深すぎる」「二人の関係性に尊さを感じる」といった反響が広がっています。師弟という枠を超え、一つの時代を共に戦った戦友のような眼差しが、読者の心を打っているのでしょう。文学史を学ぶ上でも、これほど熱量の高いテキストは稀有な存在です。

本編には評論だけでなく、鴎外の人となりを慈しむような筆致で綴られた随想も、オリジナル編集で多数収録されています。1,000円という価格以上に、ここには一人の作家がもう一人の作家に捧げた、究極のオマージュが詰まっているといっても過言ではありません。

2019年12月14日に世に送り出されたこの文庫本を手に取ることは、明治・大正という激動の時代を駆け抜けた二人の巨人の対話に耳を澄ませる体験となるはずです。時を超えて語り継がれる師弟愛の記録を、ぜひ皆さんもその目で見届けてみてください。

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